1)勝つためなら何をしてもいい倫理観
2)自分は天才だと信じてやまない思考
3)机上論
つまり、軍人特有の短絡的な思考回路によって書かれた本だということです。「ぶっ放す」など強調の「ぶ」を使いたがり、己の判断、作戦がいついかなるときでも絶対正しいと思い込んでいる。にもかかわらず、他者の作戦には独りよがりにならないように・・・などと述べる。この本を読む限り、こういう思考の人間こそ最前線に出て欲しいと思える。
【戦争観について】
戦争とは何か。戦闘とは何か。当然、綺麗事では済まされない部分もある。
著者が本文内で語る、地雷に関する条約を日本は破棄すべきだという点、確かに一理ある。わずか200円で敵兵を木っ端微塵に出来る地雷は、戦略的に非常に便利だ。アメリカ、中国、ロシア他多くの国が地雷を利用し続けている。この条約の意味と国防上の憂慮は分かる。
しかしだ。平時のお題目のために専守防衛、平和憲法を持っているわけではない。戦争に勝つために、国土を守るために何をしてもよいというのであれば、今すぐ日本は戦略核を持つべきだし、打つべきだ。各種条約に定められる使用の制限、禁止の対象となる兵器はなぜ使ってはいけないのか。ダムダム弾や劣化ウラン弾、使えるものは全て使えばいいではないか。更に進めれば、攻められる前に攻めればよい。北朝鮮が怖いなら焼き払えばいいし、中国、ロシアに先制して核を打つべきだ。
戦勝のために生きた結果、国が衰退した例は非常に多い。しかし、敗戦から復興し、繁栄した国は日本の他にも多くあるということを軍事評論家なら武器弾薬の重さや使用法以前に知るべきだ。こういう人間は絶対に国の政治について語らせてはいけない。改めてシビリアンコントロールの重要性を感じた。
韓国人の大統領の記憶力が足りないだのなんだのいう前に、自身の思考力が十分か確かめるべきだろう。お前一人で戦争おっぱじめるわけじゃねえぞと。やりたきゃ竹槍持って一人突撃してくれ。
【なにやらモヤモヤする】
さて、悪態をひとつついたところで、私は軍関係者でも従軍経験もありませんが、どうにも納得出来ない箇所がこの本にはちょこちょこと出てきます。といいますのも、小説の資料集めの延長線で書かれたような従軍経験といいますか、机上の空論のように感じるわけです。
手榴弾を30m先の敵の頭上で炸裂させるために2まで数えて投げるそうですが、物にもよるでしょうが、手榴弾は4秒で炸裂しする重さ500グラムの鉄球であると仮定した場合、本当にそんな芸当が易々と出来るものなのか。不可能だとは申しませんが、あまりにも小説的な仕立てです。
手榴弾を投げたことがないので分かりかねますが、手榴弾と重さが近いハンドボールなら経験があります。ハンドボールは大体450グラムで手榴弾よりかなり大きいのですが、中学時代は45メートル程度でした。成人男性の中で、余程の強肩の人間で60メートルといったところでしょう。私は相当強肩でしたが、それでもこの成績です。
さて、幾ら屈強な軍人といえども、柘植氏の語る砲丸投げの要領で投げれば60mくらいには・・・というのは創作のニオイがプンプンする。60メートルといえば、野球の塁間の3倍です。その距離を砲丸投げの要領でエイヤッとやって60飛ばせるか。私は無理だと考えます。そもそも、60mのキャッチボールが並の人間には不可能です。硬球は150グラム程度ですが、私が全力で投げて80mというところ。500グラムもある物を全力で投げて60m届かせる自信がありません。プロ野球のトップクラス(イチロー選手)でさえ130m前後と聞きます。参考までに私の砲丸投げ(7.2kg)の記録は9.1mでした。
更に更に付け加えるなら、あの有名な投手、澤村栄治氏は旧日本軍の手榴弾ではありますが、78m投げたといいます。これはもうとてつもない大記録で、澤村投手が現役時代投げていた球速をビデオ映像から割り出すと、160km/hになります。またまた私事ですが、私が全力投球して135km/hで、同じ重さのハンドボールが40m。
どうですか。並の軍人が砲丸投げの投げ方で60m飛ばせると思えなくなったのではないでしょうか。
ちなみに、プロボクサーのパンチの速さが30km/hです。砲丸投げの鉄球も大体これと同じくらいの速さで飛ぶそうです。腕を突き出す速度ですから当然ですね。
おやおや・・・。
このように、色々と胡散臭く、どれほど信用に値するかは分かりません。
米軍の大尉だったそうですが、著者略歴を見ても、特にダブった様子もないのに在学中に軍隊に入って活動してたとか。また、30歳前後に米軍に入りラオス内戦に参加したそう。そこから大尉になるということはどういうことなんでしょうか。米軍のシステムは分かりませんが、国籍的に外国籍の人間がいきなり特殊部隊の部隊長クラスになることが可能なのか、最終的に尉官にまでなれるのか。にわかには信じられません。また、色んな戦場を転戦したように書いてあるのもどうにも・・・という感じです。
私も小賢しく、貧乏ったらしいものではありますが、売文業の端くれ。
なんとなく嫌なニオイを感じるんですね。軍に対しての知識はなくとも、こういう嗅覚は持っているつもりです。
検証可能な方、検証してみたいと思う方、一度読んでみてはいかがでしょうか。
柘植氏はご本名ではないそうで。私と同じですね。
私にはそうしないといけない理由がありますからね。うしろぐらーい理由が。