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『ゲーミフィケーション』(井上明人/NHK出版) #011

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ゲーミフィケーション。なんだか最近耳にするようになってきたこの言葉。
一体なんなんでしょうか。それを知るためにこちらの本を手にとりました。
(さすがはNHK出版。いつも目を惹く装丁を出してきますなァ)


一言でいえば、ゲーミフィケーションというものは、
「今まであったものに名前をつけただけ」であって、学ぶ価値もありません。
これをメシの種にするだなんて、ええ商売してまんなァってなとこです。
よほどのバカでもない限り、ふつう理解していることなのです。

努力に対する報酬。ゲームはこれが明確に定義されています。
ここでいうゲームというのは、こまっしゃくれたオサレな意味のゲームではなく、
テレビゲームのことです。
モンスターをたくさん倒すと、お金がもらえる。レベルが上がる。
難しいステージをクリアすると、特別なアイテムや称号が得られる。
そういった、ああすれば、こうなるという決まりごとがゲームには存在します。
プログラムですから当たり前なのですが、これが実社会では難しい。
実社会では努力をし、成果を出したのに評価されないわけです。
これでは競争の原理が働きません。受験勉強などは、明らかな序列がつきますから、
人よりもいい大学に行きたいなどの(私にとってはくだらない)目標が存在し、
それに向かって努力をする。勉強で一定の経験値を貯め、受験というボスとの
バトルに挑む。この戦いに勝利すれば、いい大学に入れる。という寸法です。

私がこのシステムに熱中したのは小学生のとき。
担任の先生が、読書数に応じてスタックシール(丸い小さなシール)をくれたんですね。
それをどうするかというと、教室の後ろにある壁に「読書メーター」というものがあり、
そこにシールを貼っていくことで、自分がどれくらい読んだかわかる、と。
読書という努力で経験値を貯め、シールという報酬を得る。
それだけでは終わらないのがミソで、そこにゲーミフィケーションが存在するわけですね。
シールが増えていくだけでは意味がない。
自分のシールがクラスの誰よりも多くなるように、誰もが努力するわけです。
ここに競争が起こる。人間とは浅ましいもので、人よりも上にいたくて仕方がないのです。
それまで本など読まなかった子たちが、必死に読書をはじめました。
誰それより上だ、下だとやりはじめるんですね。
そんな中にあって、私は圧倒的な読書量でした。どれくらい圧倒的かと申しますと、
2位の子に10倍の差をつけるほどです。読書メーターはあっという間にシールで埋まり、
私のためにメーターの用紙は次々に付け足されていきました。
結果としてどうなったか。みんな読書をやめてしまったんですね。
はじめのうちは、あんなに必死に人を蹴落とそう、上に立とうともがき、
意地汚さを前面に押し出していた連中が、被害者面をしだすわけです。
あれ以来、私は競争のアホさ加減に気づいてしまいまして。
誰かより上だの、下だのにすっかり興味が薄れてしまったんです。

私がソーシャルゲームに興味がないのもこのような理由からですが、
ソーシャルゲームは実にこの「意地汚さ」をついているわけです。
いえね、ソーシャルゲームが意地汚いのではなく、人間が意地汚いんですが。
つまり、努力は金で置き換えられるわけです。
課金すれば万事オッケー。ウフフってなもんです。
金で人より上だ、下だとやる。分別のない子どももやるわけですから、
容易に引っかかります。
読書メーターにおける私のような無双キャラばかり跋扈していると、
誰もがゲームをやめますが、自分より少し上の奴とタイマンしたり、下の奴をいじめる
ことでゲームを進めることができるというのが実によくできているわけです。
絶対に勝てない奴とはやりあわなくてもいいマッチングシステムがなければ、
ゲームは成立しないわけですね。

まとめますと、利用者、参加者になんらかの「やりがい」を感じさせること。
これがゲーミフィケーションといいかえることもできるでしょう。
ここまでダラダラと書いてきましたが、おおかたこれでゲーミフィケーションの説明は
終わったようなものです。ゲーミフィケーションの導入事例など、
とくに見なくとも、ネットで探せばいくらでも存在します。
みなさんは既に「読書メーター」という事例も見ましたしね。
特にこれといって読むべきものもありませんが、ご興味、ご関心がおありでしたらどうぞ。

『わたしのせれくしょん』
 

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