本書より問題を一部改変したうえで抜粋してみました。頭の体操がてら、いっ
ちょ解いてみてください。応えは続きを読む以降に掲載させていただきます。
あなたは年利12%(単利)で私から100万円を借りました。月々の
返済額は1万円です。完済するのに何年かかるでしょう。
A. 5年 B. 8.3年 C. 10年 D. 32年
少し頭をひねれば簡単に解ける計算です。難易度としては小学5年生レベルで
しょう。さて、どれが正解でしょうか。
計算できましたか?では答えあわせとまいりましょう。
正解はどれでもありません。
もう一度申し上げます。正解はどれでもありません。あなたは一生、完済する
ことはないのです。多くの方が勘違いされていますが、借金の返済で支払うお
金は、基本的に元金ではなく利子に充当されます。つまり、年利12%で100万
円ですから、年間12万円の利子。これに毎月1万円ずつ支払うのですから、元
金はビタ一文減らないのです。
答えがないなんてズルいじゃないか!と仰られますか。確かにそこは不誠実で
した。しかし、私は法に裁かれるようなことはしておりません。この契約を結
んだのはあなた自身のご判断です。また、金利も年利29.2%未満であり、実に
良心的な金利となっております。監督指導を受けるいわれはございません。あ
なたは生涯、私に毎月1万円の不労所得を支払うのです。そのような契約を受
け入れたあなた自身に問題があるのであって、私を欠陥者扱いするのはお門違
いもいいところです。
世の中にはつくづくこういうことをおざなりにして、車や家を買う人、携帯電
話やカードローンを利用する人が多いと感じます。住宅ローン破綻をブチかま
す人間は、ほとんどの場合が自身の力を過大評価し、金の重さを見誤り、また
は何らかのコンプレックスから金を使うことで自身の力を示さんとして、人生
まで破綻させてしまうのです。
以前、不動産を扱う私のもとに某大手メーカーで家を建てたいと仰られる方が
こられました。その方は、大手で3000万円の家を建てるが、あんたの所が扱う
1800万円の家というものも気になる。1800万円だとどれくらい質が落ちるのか
知りたいというのです。なんとも酷いいい方ですが、そこは客商売。誠実に対
応させていただきました。
私にとっての誠実さとは、3000万円の家を買うとどうなるか。高級住宅を専門
に扱う人間が教えない、お金の重みの話をして差し上げたのです。お客様は、
年収の7倍の借り入れを行い、頭金は親が出してくれる800万円だといいます。
自分で用意した金は100万に満たないご夫婦は、既に高級マイホームを建てる
妄想の中で浮き足立ち、何も見えておりません。そこで、3000万-800万(頭金)
の2200万円を夫婦の年収400万円(手取額ではない)で返済するとどうなるか、
とうとうと語ったのですが、気分を害されたらしく、結局高級住宅を建てられ
ました。頭金を出す親御さんは、高級住宅であることをよく思わず、私の所に
相談にやったようですが、若いご夫婦の思いは変わらなかったというわけです。
こんなところで長々と語るわけですから、この話には当然オチがあります。奥
さんが妊娠され、出産、子育てに入ることになって2ヶ月ほどして、夫の虐待が
起き、夫婦は離婚。慰謝料の支払いのため家は任意売却にかけられました。原
因はもちろん、住宅ローン返済が滞り、乳飲み子を育てるどころか、出産資金
まで親にせびる自体になったため。実にお定まりといった具合で、笑い話にも
なりません。
本書の中でも扱われておりますが、日本人は金の使い方は知っていても、守
り方を知らないのです。金持ちは、金を守るために使うのですが、一般人な
いし貧乏人とされる方々は、守るために攻めるという発想がそもそもない。
それで金持ちよろしく勝負をすれば、後はどうなるか考えるまでもありません。
本来、こういったことは小さいころに親から教わるべきなのですが、残念なが
ら今の時代、好況しか知らずに育った世代が子を育て、その子がまた子を育て
るという、マネーリテラシーがまるでない世代の再生産が行われてしまってい
るため、それも叶わないのです。
お金に対しての認識が人並みだと思うのであれば、これを機会に一読されても
よろしいのではないでしょうか。中には民法のことを知らないがために致命的
な間違いも書かれておりますし、学問と実践を履き違えた議論も展開されます
が、それを差し引いても得られるものは多いと思います。活字が苦手で、絵を
見たいという方にもぜひ。