『干物妹(ひもうと)!うまるちゃん』はサンカクヘッド先生が描く、ショートコメディ
作品。外では容姿端麗(画像左上の美少女)、頭脳明晰、運動神経も抜群な妹、土間うま
るは、ひとたび家に帰ると一時期ドラマにもなった「干物」とあだ名されるようなダメ人
間に成り果てるという二面性を持った主人公。しかし、どこか憎めない愛らしさと人間ら
しさを持っており、妹思いで彼女に振り回される兄タイヘイとの日常が中心に綴られてい
きます。通常、妹系、日常系作品といえば、癒しや突拍子もないギャグ、単なる萌え作品
が多い中で、リアリティのある人間臭さ(オタ臭さともいえますが)と、家族愛ともいえ
る兄の優しさ、甘さが随所に散りばめられており、ありきたりの萌えマンガ、オタマンガ
とは一線を画する作品に仕上がっております。
(作中のうまるはほとんど二頭身。リアル頭身になること事態がギャグの世界です)
私は常々、サンカクヘッド先生の作品を読むにあたって、本当に損をしている。氏は
フグのような漫画家なのに、と感じておりました。つまり、そういう料理の仕方をし
てはいけない。こういう方向で料理(描いてもらえれば)すれば、もっともっとよく
なると感じていたわけです。辛辣ではありますが、今までの料理方法ではクセが強く、
ともすれば毒であり、とても多くの読者の支持を集められるものではない。氏自身が
描きたいものと、氏の才能と世間の求めているものの乖離を口惜しいと感じていたの
ですが、このたびの『干物妹!うまるちゃん』でついにそれが一致したなと。調理師
免許を持った編集が捌いたのではないかと。
マンガひとつで気持ち悪い話かもしれませんが、ガッツポーズをしたんです。
いや、本当に。
かわいいものをかわいく描く力と、人をそれぞれ血の通ったように描く力があるのに
も関わらず、そこにギャグを盛り込むために無理が出て、読者から見放されてしまう。
やり方次第では秀作、傑作は間違いないのに、無理の出ている部分、フグでいうとこ
ろの卵巣や肝、皮などを削ぎ落してやれる人がいなかったがために真価を示すことが
できなかった方です。
私をご存知の方からすれば、気持ち悪いほどの絶賛ですが、はじめの画像をご覧いた
だきまして、リアルな頭身のうまる、デフォルメ頭身のうまるを見て、かわいいなと
感じられた方であれば楽しむことができるかと思います。ぜひ一度お読みください。
2013年度イチオシのマンガです。
※※在庫切れは解消となった模様です※現在Amazonや楽天ブックス等では在庫切れとなっている模様です。こういった単行
本は初動が命。発売してから数週間の売上が連載の長短にまで響くもの。もし、連載
中の本作をお読みになられていて気に入ったという方、今回のレビューで気になった
という方は、お近くの書店でご予約、お取り寄せください。それはちょっとという方
は、Amazonはネット書店最大手ですので、ここでの注文は一定数集まれば版元であ
る集英社への圧力になり得る可能性があります。連載の継続だけでなく、重版という
対応をとってくれるかもしれません。ぜひ「うまる」に重版のための清き注文をお願
いいたします(何