なぜどすこいか?それは、筑摩書房の倉庫が蔵前にあったから。蔵前と言えば両国の近く。両国と言えば―?国技館というわけです。出版業界の流通は、未だ他業種に比べれば未熟で語るに値しないといわれます。しかし、だからこそ、そういう空気が「ものづくり」の特殊性を如実に表しているようにも思うわけです。土日無し、16時間労働とか当たり前の出版界のね。
何も売り上げが期待出来なさそうだから手放したわけではない。
田中氏は2007年に亡くなられ、出版が困難となったいきさつがある。
一冊の本にまとめる際に出版業界人としての意地があり、本人が内容をチェックする事を望んでいた。しかし、それは叶わぬままに田中氏は出版業界に別れを告げられた。
他社の社員の著作を出版させてくれという会社、それを認める筑摩書房。
このバリアフリーさが出版業界の売りである。不思議な隣組だ。
敵の敵は味方ではなく、味方の味方も味方。何を意味不明なことを…と思われるだろうが、出版業界で個人を名指しで敵視することはあれ(私怨で)、出版社を敵視することは珍しい。ライバル視はするけどね。
出版業界はそう簡単に変われない。それは、本を人が作るから。
どこまで行っても人の心と努力でしか本は作れない。
作っている人間の意地、売る人間の意地、買う人間の意地があり、それら全てが出版業界なのだ。本を手にする人間は、出版という演舞場に上がる演者だと自分は思う。その連帯感、不思議な空間が立ち所に消えると言うことは、この先もきっと、無い。
でも、もうちょっと書店さんには頑張って貰いたいな。我々出版社も誠心誠意頑張りますから。「ドジョウ本かよ」とか言わずに。類書って案外売れて書店としてもフェアを組みやすくない?とか生意気な事を思ったり。取り次任せでは、今後厳しいと思います。
※ドジョウ本…二匹目のドジョウを狙った(パクり)本