日々の雑事 - ZATTAs

編集者が教える速読のために知っておくべき14のルール

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古本

世は速読ブームです。しかし一方で、反速読という派閥があることをご理解いただく必要が
あります。彼、彼女らは、速読は身にならない、作者の意図を汲めない、作り手に失礼だ。
このように反論してきます。私もかつて、このような猛攻を受け、大変苦しんだ覚えがあり
ます。皆さまが速読法を身につけると、きっとどこかで反対勢力の攻撃を受けるでしょう。
それでもいい。速読を身につけたいという方だけお読みください。


※前置きは結構という方は、3.からお読みいただければと思います。

1. 速読法は「悪」ではない

私は編集者という、本の企画と工程、品質を管理する仕事をしていました。
仕事上、たくさんの本や資料を読むことになります。ビジネス書の担当であったため
ビジネスの成功秘話やビジネス小説の投稿作品を読む機会がよくあり、連日50万文字
以上もの文章量と格闘していました。発刊予定の書籍の原稿を読み、直し、作家に送
り返す。バイク便へ依頼の電話をかけたら、すぐさま次の企画をまとめだし、出版希
望者の投稿作品に目を通す。まさに不眠不休で目の回るような忙しさでした。
そんなある日、ある有名な作家さんの生涯を綴るという企画がある本と一緒に上から
回ってきました。それは、20年前に作家さんの半生を元につづった小説で、それを参
考に取材、再構成を行えという指示でした。私は限られた時間がさらに減るからと、
全力でその本を読み、手近な紙片にメモをつくって、従来の自分の仕事に戻りました。
ところが、それがシャクに触った先輩編集者が烈火のごとく怒りだしたのです。
10分程度ページを繰ったあと、ちょこちょこと3分ほどメモをとっただけだ。お前は
この仕事を舐めているのか。といった趣旨でした。
こうなることはなんとなく想像はできていました。それでも仕事が立て込んでいるた
め、上からいわれた仕事をしているふりをよきところまで続けている余裕はなかった
のです。そんな中、先輩の決め台詞が飛び出します。
「編集者たるもの、本をないがしろにするとはどういうことだ。ちゃんと読め」
確かにそのとおりです。本づくりの苦労は私自身、骨身に染みてわかっています。し
かし、一語一語拾い上げ、味わい、考えていたのでは、余暇の読書ならまだしも、仕
事の上での読書にはなりえない。そう考える私は、入社半年の身でその道30年の先輩
と真っ向から対立しました。
「お前がちゃんと読めているかどうか、テストする」
そういうと、先輩は資料として渡された小説をパラパラとめくり、どういう話であっ
たか簡潔に述べるようにといいました。もちろん、そんなことは朝飯前。読了後にメ
モをとっているのですから。スラスラと筋を伸べ、どこが気に入った、どこが盛り上
がったなどと付け加えるものですから、先輩の怒りは増すばかり。
「じゃあ、主人公と友人が一緒に行ったバーの名前はなんだ!」
これには閉口しました。主人公と友人がバーに寄ったことは覚えていますが、軽く店
主とあいさつをしただけで、まったくストーリーに関わりのない部分なのです。答え
られないとみるや、私は編集部内で鬼の首をとったようにまくしたてられてしまいま
した。今でも自分は間違っていなかったと思いますが、そんなことはどうでもいいこ
とで、そもそもこんな質問は反則です。じっくり、ゆっくり、味わって読んだとして
も、数日のうちに忘れてしまうような情報でしかありません。そんなものに拘泥して
もたついていると、もっと大切なことを疎かにしかねないのです。
「そのバーの名前を覚えておけば、今度の本が売れますか」
私のひとことで、編集部は凍りつきました。

2. パーフェクトより広く浅く

日本の教育は、一語一語丸暗記し、主人公の気持ちや、作者の気持ちを考え、分析し、
パーフェクトになることを求めてきます。しかし、多くの人にとってそんなことは必
要ないのです。1冊の本をパーフェクトに読む前に、10冊の本を50点でもいいから読
む方が、ずっと役に立つのです。国語は100点だけど、数学や英語は0点のA君と、3
科目とも50点のBさん。入試で勝つのはBさんです。
どうしてこのようなことを力説するかといえば、0点を50点にするのは簡単ですが、
50点を100点にするのは難しいからです。それに加えて、80点から上は急激に難しく
なります。そんな部分にこだわっても得るものが少ないことは、受験のテクニックと
して昔からいわれ続けています。同様に、読書でもそこまでこだわる必要があるのか。
私はないと思っています。特にビジネス書などのノンフィクションでは、必要な情報
は本全体の2割に集約されており、残りの8割は蛇足です。この文章を読んでいるあな
たも気づいたはずです。さっさと箇条書きにしてまとめれば、終わることだろうと。
つまり「ロングテールの法則」が本にも適応できる。2割に80%の重要なことが書いて
あり、残りの8割に20%のことが書いてあるわけです。ここでいちいち、「ロングテー
ルの法則」という言葉を覚えようとしたり、意味や定義を確認するのは勉強家ではあ
るのですが、速読法を学ぶ生徒としては失点です。そんな言葉を知らずとも、前後の
文章で全容がつかめれば、読み飛ばしてしまえばいいのです。言葉は知らなくとも、
内容がわかっていればこと足ります。黒くてシュワシュワする飲み物がコカかペプシ
か知らなくても、飲むと美味しいと知っていればそれで済むのと同じです。ラベルや
味の差異についてウンチクを垂れてくるやつは、生涯をそんなことに費やすやつなの
です。時間を無駄遣いするやつの相手をするほど、無駄な時間の使い方はありません。
まず、時間は有限なのです。要る情報か要らない情報か、あなたも日ごろ取捨選択し
ながら生きているはず。新聞は1部の情報量が新書1冊分ですが、隅から隅まで読みま
すか?テレビはおもしろそうな番組はないかなとザッピングしませんか。そういった、
人間が持つ情報の取捨選択機能を、どうして本のときだけ否定するのでしょうか。私
は本をつくっている人間だからこそ思うのです。本はそんなに偉いのかと。速読法は、
このような「本を特別視」する固定概念を捨ててもらうところからはじまります。は
じめは、読み飛ばしているような気がして大変もったいなく感じるかと思います。そ
の都度「テレビや新聞ではそんな気はしないぞ」と思ってください。情報をザッピン
グしていく中で「おやっ」と思ったならば、そのチャンネルを選ぶように、そのペー
ジをじっくり読めばいいのです。その本が自分の生き方を変えるほど素晴らしいもの
であるならば、きっと「おやっ」が何度も出てくるはずです。そんな本に出会ったら、
また最初からじっくり読みなおせばいいだけのはなしです。速読法をはじめる前に、< br />今までの本の読み方を綺麗さっぱり忘れてください。それでは、はじめますよ。

3. 速読法を身につけよう

私の速読のスピードは、1ページあたり3秒程度。1冊250ページの本を10分少々で読み
終えます。基本的な理解において、他者の読書と遜色はないと私は考えております。
もちろん、パーフェクトな理解があるとはいいません。そもそも、そんなことははじめ
から狙っておりません。速度と概略をつかむことを重視していますから、読み落しもあ
ちこちにあります。まず、速読とはこんなものであるとご理解ください。

・読む価値のないものがあることを知る
 読む価値のない本、ページは存在します。もしあなたが速読はもったいないと考え
 ているのであれば、読む価値もない本やページを読む方がもったいないとお考えく
 ださい。「1500円も出したのに!」とおっしゃられる方がおりますが、1500円と
 られた上に、時間もとられてはかないません。読む価値のないものを早めに見切る
 ことができるのですから、得をしたと考えるべきです。

・本に逆転ホームランはない
 出だしが面白くない本は、最後まで面白くありません。出だしで役に立たなさそう
 な本は、最後まで役に立ちません。これは経験則でもありますし、同時に本の宿命
 でもあります。編集者や著者は、出だしに一番心を砕きます。書店で手に取って、
「はじめに」の部分を読み、購入を決める方も多いはず。この情報過多の時代、出だ
 しがおもしろくなくてどうするつもりなんでしょう。もし、出だしでダメだと感じ
 たら、その本の著者や編集者は、そこまで気の回らない人間か、よほどの変人です。
 本は後半に行くほどページ稼ぎや中だるみで間延びしていきますから、冒頭部で違
 うと感じたら、読むのをやめてしまうのも懸命な判断かもしれません。読む必要が
 ないという感想を抱いたのですから、その本はしっかり読まれたといっていいので
 はないかと思います。本に逆転ホームランはありません。読む価値なしと放り投げ
 るのも読んだうちです。
 

・集中できる条件整え、条件反射で動けるようにする
 テーブルの上にコーヒーを置き、白檀のお香をくゆらせて、本を読むというスタイ
 ルを確立したのであれば、なるべくその環境で継続して速読を行ってください。同
 じスタイルになった瞬間に、条件反射で速読脳のスイッチが入るようになるのがベ
 ストです。速読には大変な集中力が必要ですから、乗り気ではない状態ではじめて
 も速読法は身につきません。十分に集中力を高め、リラックスした状態で行ってく
 ださい。

・速読はそれぞれの集中力に合わせてこまめに切り上げる
 速読は大変な集中力が必要です。普通の人が3時間も4時間もかかるような本を、わ
 ずか10分で読むわけですから、精神的に10倍以上の疲労があってもおかしくありま
 せん。はじめのうちや、分厚い本などを読む際は、30分、40分とかかるかもしれま
 せん。その際は、無理をせず10分、20分単位で時間を区切って速読を行ってくださ
 い。集中力が途切れているのに、読んだふりをしながらページだけめくっても、何
 の意味もありません。ページの上を目が滑り出したと感じたら、その日はもう切り
 上げるか、しばらく休憩をとりましょう。

・読むときは自分の思考を挟まない
 あなたはコピー複合機です。まず、コピーしたいものをすべてメモリーし、あとで
 まとめて印刷するのがあなたの使命です。
 コピー機は「お前の物言い気に入らないぞ」などと文句をいうことはありません。
 文句がいいたければ読了後、人間に戻ってからにしてください。それまではどんな
 に得心のいかない内容でも、心を鎮め、穏やかに、ただただ速読を続けてください。

・速読に巻き戻しボタンはない
 あなたはコピー機(オートスキャナでもよい)なのです。「おっと、今の無し」は
 ありません。ページをめくった瞬間に、前のページには戻れないという掟を定めま
 す。

・光るキーワードをみつける
 読んでいくうちに話の筋がなんとなくわかり、先々の展開の予想や読んできた部分
 の穴埋めができるようになります。その予想や穴埋めを効率的に行うために便利な
 のがキーワードをみつけることです。文章の特性上、一番大事なことは最初か最後
 に述べられます。また、文章が弾んできたり、どんでん返しがありそうだというの
 は、速読中でもなんとなくわかります。そうなったときに集中し、キーワードを探
 せば、効率的にキーワードをみつけることができます。

・この本を何分で読むと決めてしまう
 はじめは250ページを30分。これでいきましょう。1ページあたり7.2秒です。
 慣れてくれば、5秒もかけると長居しすぎた!と思えるようになります。

・ページをめくるペースは一定
 もし読めていなくても、ページはめくってしまいます。速読にはリズムが重要です。
 ページをめくりにくい体勢であれば、改めてください。同じペースでページをめく
 ることを大切にしましょう。

・読み方は、ブロック法、斜め読み法、一文字法が一般的
 ブロック法は、頭の中で数行まとめて長方形の枠で囲んで、写真を撮るように読む
 方法です。パシャっと目に焼き付けたら、その内容を頭の中で読みながら、次のブ
 ロックを囲みにかかります。
 斜め読み法は、文字通りページを斜めに読んでしまう方法です。速い人は右上から
 左下まで一閃!読めてしまいますが、はじめのうちはブロック法のように、ページ
 を3~4等分して、数行ずつ斜めに読んでいきましょう。
 一文字法は、ページの右端の真ん中あたりに視点をおき、漢数字の一を描くように
 左へ目線を移動させる方法です。高速に行単位でスキャンするようなもので、一番
 効率的に速読ができますが、習得が少々難しいのが難点です。

・読み落としを恐れない
 本は、大切なことは何度か出てくるものです。ある部分で読み落しても、ほかの部
 分で引っかかります。文字を追いかけようとしなくても、必要なものは何度も出て
 きますので、心配は無用です。

・よく似たテーマ同士を関連づける
 速読中

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