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マンガ電子化の遅れは版元がすべて悪いのか

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マンガが電子書籍として読めることは消費者としてはありがたい。一方で、版元として
はまだまだ未整備の世界であって、本格参戦は難しいところがあるようです。一般的な
出版物と違って、マンガというものは基本的に作家が仕上げます。そのため、作家の権
利が他の出版物よりも比重として重め(出版社との比較で)とされているようです。

近年の電子書籍情勢を鑑みるに、ひとつ気になることがあるのです。マンガは100%作
家の作品のため、出版社がその出版権を押さえ込んでいるのはオカシイという人がおり
ます。まあ、100%とはいかないまでも、90%は作家のものなのだから、自由に出版さ
せろというわけです。この道理は通るのか。そんな話をさせていただこうと思います。


「絶対にNO、作家の作品でも権利は版元(出版社)という契約のはずだ!」これが一
般的な版元の対応です。確かに契約書通りですからね。しかし、電子書籍という形で、
販路が開けたのだから「そんな古臭いことをいうなよ」「みみっちいこというなよ」
という考え方が割と支配的になっている。そういう土壌づくりをしておるわけです。
誰がって?作家がですよ。被害者であるかのように述べれば、企業という大きな母体は
自然と悪だと認識されるのが世の常。販路が拡大するのだから、権利を認めろ、権利を
寄越せ!とこうなる。

しかし、それを認めてしまっては、版元としては困るわけです。ひとつは編集者によっ
て編集、営業によって販促、その他各部門の努力によって完成した製品には経費という
ものがかかっている。名もなき新人の持ち込み作品を見、育て、試験的に掲載し、反応
がよければ連載し、売り込む。こういった一連の種まき型、農耕型の商売をしている版
元からすれば、人気が出たから権利を認めろだのといわれてはたまらないんですな。し
かし、こういったことを言ったところで誰も聞いてやくれません。企業は悪、出版社は
金持ちなんだから…という土壌がありますのでね。金持ちなのは不動産を抱えている一
部だけですよ。ほとんどがヒィヒィいいながら本を作ってんだけどね。そんなところは
新人育成能力が低い。というか、育てる余裕がなくってね。金がかけられない。だもん
で、持ってこられた原稿をただ載せてるだけの出版社は知らないけれど、育てている所
からすれば、到底承服できないわけ。

次に、原稿(データ)は商品であって、塩漬けにしようが何にしようが持っている側の
勝手。作家側が単行本にしないなら権利を寄越せといっても、かたくなに拒んでもいい。
というか、拒むべき事情があるんです。売れなかった作品でも、商品なわけで、いつか
電子書籍にして売るかもしれないし、将来その作家が大作家になった場合、原稿を抱え
ていれば全集なんぞを作る際に有利になることもある。ただ単に嫌がらせがしたくって
作家に渡さないといっているわけではなくて、利益を生む可能性がゼロでない限り、ホ
イホイ渡すことは背任行為に相違ない。渡してしまって、作家が無料配布なんてした日
には商品価値がゼロになってしまいますからね。それはできないということになるんで
す。(配らなくても下手な電子書籍サービスや違法ダウンロードで拡散しても困る)
ケチ臭いようですがね。

という事情があるわけですが、そんなこと百も承知のはずの電子書籍推進派の作家たち
は、版元を糾弾し、版元憎しの土壌づくりをするばかりで、金や時間をかけて自分たち
で新人を育成したり、営業を行って、紙の本、出版社と完全に決別することはしません。
「正義は我に有り」と声高に叫んでいるのに、電子書籍でもって出版業に殴り込みをか
けないわけです。なぜか。

いうまでもありません。そんなことをしたらテメーが食えなくなるからです。版元から
原稿の依頼がなくなって食えなくなるというのもあるでしょう。こう書けば、皆さんは
版元のせいで電子書籍化が進まないんだと怒られるかもしれませんね。しかし、さにあ
らず。

電子書籍手放し賛成派ないし、版元悪者論者たちが自分たちで完全なる出版システムを
構築できないのは、現行の版元、印刷、取次、書店等が結託して電子書籍産業に乗り込
んできた場合、自分たちで金や時間をかけて新人育成や営業システムを構築していたと
しても、一瞬で吹き飛ばされてしまうからです。

だからこそ、彼らは抜本的、根本的解決をしないのです。そして、いつまでも版元が愚
図っていてくれた方がいいわけです。版元を非難するだけで人気と金が集まりますから
ね。

実に下らんプロレスですよ。商売や現実から目をそらし、理想を掲げて得意になってい
るだけなんですから。私はマンガの電子書籍化について何ら否定的な意見はありません
が、こういった腹の足しにならない行為をいつまでも続けているようなら、大手が黒船
で来襲するまで電子化しない方がいいんじゃないかと思いますね。

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