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叱る価値

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シリーズ二十歳も過ぎると、誰も自分の意見を否定してくれなくなる。そうなれば、私のような人間はただただ増長するばかりだ。叱ってくれる人間の大切さを感じる。自身が明確に叱る事をしないだけに、叱る事の難しさも良く分かるが、叱る立場に居る人間はもっと叱らなければならないだろう。


叱る事が出来るという事は、通常、叱られる人間よりも偉い(地位ではなく能力が)わけで、そういった優れた人物が眼前を歩いていてくれるだけで人は変われる。大人物の側に居る事で、克己心のある人間はどこまでも伸びる事ができる。「寄らば大樹の陰」という意味ではなく、だ。

「お前の言っている事はおかしい」と、ハッキリ言われる事で、
自分がどれだけ阿呆なのか痛感できる。自分の位置を把握するにはそれしかない。1メートル毎しか目盛りの無い物差しを担いで人生を送るのと、1mm単位で測れる物差し「も」持って生きて行くのとでは結果が大きく異なる。人生の漂着点に誤差が出るのはどちらか。やってみなくとも分かるだろう。

その為には先ず、「意見する」勇気が最も大切。次に、自分の行いを見直す勇気も必要だろう。「間違ってるよ」と言われて憤慨する人間が多いのが困ったところだが、自分の考えを見直せない人間は、他人もまた考えを見直してくれない可能性に気付くべきだ。「自分は間違ってない」と思える、1メートル物差しで生きてきてしまったのなら、早めに目盛りを打ち直そう。

仮にその道の先輩が間違った指摘をしてきた場合は、両者が納得行くまで意見する必要があるわけだが、まあ、そこまで行ける関係の人間は、私の身近に5…6人くらいしか居ない。「しか」などと言っているが、かなり恵まれていると思う。顔を見て腹を割って話せ、「おかしいよ」と言え、「言って貰える」関係は実生活ではなかなか構築できないだろう。1メートルの物差しの人間は、同じ物差しを持つ人間としか交流しませんしね。

また、叱られて伸びるのは自分の能力だけではない。自分の叱る力も伸びる。多くの場合、同じような過ちを後輩が行う。それを指摘できれば、徒弟制でそのグループは常に伸び行く。叱って貰うことは、将来自身が叱る際に大いに役立つ。私は4年間同じ教授の元で現地研究やゼミで学んできたが、3年前誰かがやらかした過ちを今の3年生がやっていることも非常に多く、教授の代わりに院生と私で卒論用のプレゼミを行ったりもしている。初歩的なミスならば指摘できるまでになれたのは、多くのミスを見、してきた為だ。自分や友人、第三者が叱られていなければ、こんな力はつかなかったろう。

人生で始めて、サマリー(説明用のプリント類、要約紙、レジュメとも)を作る。
それが学術的な物であるとすれば、普段のレポートとは格段に難易度が上がる。先行研究を複数読み、体系付けられた理論を理解し、論者の言っている事を的確にまとめあげなければならない。理解が足りないと、必要な部分を落としてしまったり、見当違いなまとめを行ってしまう。

こうなれば、針のむしろだ。教授はあまり論戦に参加しないが、院生や上級生、(一番恐れられているのは私でして、下級生には申し訳ないが)同級生に徹底的に叩きのめされる。10時間、20時間、30時間…眠い目をこすりながら学生生活の合間に作り上げたA3用紙一杯の文字列を、努力の結晶を、一瞬で破壊される辛さ。それに反論できない自分の不甲斐無さ。

こういった経験を、二度と同じ目に遭わないように今度こそは。と繋げられると、次に提出する場合は見違えるように良くなる。意見も言わず、日和見で参加している人間の多くがこういった経験をし、ものの見事に打ちのめされ、自信を失う(「自身」を失って発狂、嗚咽する者も居る)。

しかし、批判する人間には責任が伴う事を忘れて欲しくない。
批判された者ばかりが苦しいのではなく、批判した人間も同様の経験をし、批判した責任まで負うのだから、実際は批判された人間よりも苦しいのだ。この批判した責任も人を成長させる重要な要素だと思う。

年を取れば分かるなどと言われるが、確かに分かる。「怒る」のと「叱る」の差。
叱ってくれる人が居る内に、様々な事を吸収して欲しい。最近、それを切に思う。

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