朝日新聞でしたか。最近の若者は留学もしない、海外旅行に行かない。見識が無い、臆病者だとする論が掲載されたのは。まあ、引越しの最中に家に来られ、引っ越し終わるまでここにいますから!と入り口に居座られ、仕方なく「無料」と言われたからとった朝日新聞。無料じゃなかったんですけどね。それはさておき、これは若者に対する新しいバッシングの形ですかね。
さて、その記事の中では若者バッシングの柱ともいうべき、「今の若者は未熟で無能だというイメージ」に則った論が展開されている。
先ず、若者が未熟なのは当然です。ここが明らかにおかしなところではあるが、ここでは面倒なので黙認しておく。
この論の中で展開されるのは、以前に比べて若者が海外に出て行かないことを嘆き、憂うもの。
憂うのは勝手ですが、いい加減なイメージを元に叩くのはどう考えても放置できない。
彼らは、今の若者は景気が悪いなどと言い訳をして海外に行かないかのように言っている。
景気が悪い事を言い訳に・・・。確かに、景気が悪いといっても、頑張れば海外に行ける若者は多く居るだろう。しかし、頑張っても海外に行けない若者も相当数居るということを忘れてはならない。こういうことを言ってしまう年寄りどもは、基本的に高学歴。簡単に言えば、金もちンとこのガキ。もしくは、金の苦しみをとうの昔に忘れたり、経済成長やバブルで知らない連中だ。
金が無いとはいっても、海外旅行には行けるだろう。とは、
金が無いとはいっても、店で買い物が出来るだろう。と何が違うのか。
若者を叩きたいがばかりに先走りすぎではないか。
若者の海外離れなどと言われるが、この「離れ」というものはバブルを基準にしているということは皆の承知の通り。バブル基準で「若者の○○離れ」と言われたところで、こちらとしては当惑するばかりだ。BMWを転がしたり、毎晩クラブで飲み明かしたりなど、出来るはずもない相談。出来ないことをやれと言う方がおかしい。
さて、彼らは海外に行くことで見識が広がると言うが、それは本当か。
見識を広める効果は事実、存在する。私の憶測ではあるが、かつてに比べて日本は豊かになったといえるのではないか。国民の心(年寄りどもの心)は知らないが、国としては豊かになった。海外への憧れという動機が失われたとしたら行く理由がなくなってしまう。当然、社会の風潮、ブームの影響も考えられる。そういった、過熱状態の時期と、冷めた今とを比較して論じても意味はないと私は考える。
ここで登場するのが数字好きな統計反論野郎だ。統計の数字を持ち出して、日本人は諸外国に比べて10分の1程度しか海外に行かない。これはもう若者の海外離れでなければなんなのだ!と言う。
そういう人物が指し示す、海外に行くことの多い素晴らしい国民は、ドイツ国民だったり、フランス国民だったりするわけだが、彼らは地理的な知識が明らかに不足しており、恥かしいのひとこと。フランスやドイツなどは隣国に簡単に出て行ける国であるし、バカンスの文化があるヨーロッパの国々は国民100人に対してその年内に海外に出て行く割合が100%を超えるのは自然なことである。ビザの問題、陸路であること、共通の通貨・・・日本とは全く状況が違う。この辺りがまったく理解されずに、ヨーロッパの若者(かどうかも分からないのに)に比べて日本の若者は・・・。とやる。なんとも恥かしい大人だ。
ここで新たに考えるべき土台として、本当に若者は海外に行かないのか?を提示したい。
結論から言えば、「否」である。現在(2007年統計局による出国率の調査)日本で最も海外に旅行する割合が高いのは、25~29歳で「若者」なのである。およそ21.6%の若者が海外に行くのだという(ホントか?‰の間違いじゃないのか?)。
次いで、40~44歳、45~49歳及び30~34歳と続く。
更に細かく性別ごとに見てみると、40代は圧倒的に男性の出国者が多いことが分かる。20代は女性の出国者が多いのだが、それ以外は基本的に男性の出国者が多い。これは、海外出張というヤツである。
この統計は、入管のように「仕事ですか?観光ですか?」などとやらない。
つまり、業務渡航者を含んでいる。当然若い世代にその権利は与えられないから女性が割合的に多くなり、40代以上の地位ある人物(まあ男ばっかりってのもそれはそれで考えさせられるんですが)となると男が増え、海外旅行に行く総数を押し上げる。
となると、海外旅行に行っていないのは若者ではなく、オッサン・オバハン・ジジババ共ということになる。
敢えて強烈な表現を使わせていただいた。
若い頃に海外旅行を経験していないと、将来も海外に行かないという研究結果もあるらしい。
これを受けて、若者の(海外)旅行を勧めようと火をつけようとしている業界がある。
大学内に不法侵入してでも「ゼミ合宿・サークル合宿」を取ろうとしている連中である。
多くのマスコミはそういう金づるに対して無抵抗だから、企業体、広告主に媚びるようなことを言いたがる。ということにも留意して、こういった記事は読まねばならないだろう。
つらつら思うに、この状況を見て、今の若者が「自宅が火事なのにほっつき歩いていられるか!」と思っていたとしたらどうか。明確に思わなくても、自宅が火事なのは間違いないし、外に出て行く状況に無いのも(経済面で)事実。先ずは若者を責める前に、経済的に豊かで安定した国づくりを目指す責任が大人にはあるだろう。あらゆる責任を上の世代に転嫁し続けた彼らには分からない事なのかもしれないが。
次代の為に生きるのが大人であるとするならば、私は大人として次の世代が「海外にでも行くかァ」と思えるような経済状況にしていきたいと思う。