恋のキューピッド焼野原塵は週刊少年ジャンプに絶賛連載中の純愛コメディ。もとい、正しくはコメディ純愛作品。主人公「吉丸」は、どこにでもいる中学一年生。ただひとつ違うのは、神によって本来持つべき運命の赤い糸を与えられず、この世に生まれ落ちた「失敗作」だということ。この人類にとって何の生産性もないクズの恋を叶える、定められた運命をくつがえすという難題を頼みもしないのに自主的に買って出たのが、神すら恐れぬ元魔王にして「最恐のキューピッド」。焼野原塵なのだ。
生まれながらにして運命の赤い糸を持たない吉丸にとって、通常の恋愛術は何の役にも立たない。吉丸の恋を叶える方法はただひとつ。他人からLOVE力を恵んでもらうこと。他人の恋愛を応援し、成立させてLOVE力を恵んでもらわなければ、主人公の赤い糸は再生しない。
倫理もルールも理解しない純魔界産の元魔王、焼野原塵(やけのはらじん)は人の心を理解し、吉丸の恋愛を成就させることができるのか。
というのが作品の流れとなります。表紙を見ればある程度お気づきとは思いますが、ジャンプ連載陣の中に入れば、著者の長谷川智広先生は一等画力が劣ります。これでもオブラートに包みました。しかし、美術系の大学を出ていることもあって、無生物の描写はしっかりしている。建物であり、机であり、棚であり…ここはこんなに描けるのに、何だって…何だっておめェ…と。つくづく画力は一筋縄にはいかないんだなと思いましたね。ムッキムキの筋肉が描けても、手や指のしわ、陰影がまったく描けない先生もいますので、なんかもう、どうしようもない部分なんでしょうか。それがまた味があっていいのですが。
本作は活字と挿絵なマンガです。ギャグマンガには大きく大別して、絵の動きだけで読ませるものと、文字(文章)のおもしろさで読ませるものがあり、この作品は後者にあたります。そのため、主人公吉丸の心境がつらつらとコマ一杯に並びます。絵だけで理解したい人には向かないのかもしれませんが、言葉の選び方、心境の描き方といった部分を文章で読んで楽しめる人にとっては、久々にこういうマンガがきたか!といったところではないでしょうか。ニニンがシノブ伝やパクマンのような、言葉選びで笑わせる作品というのは、あるようでないのです。
文字と挿絵で笑わせるギャグ。ぜひ一度お試しいただければと思います。