「総統閣下は○○○にお怒りのようです」で知られる総統閣下シリーズ。これの元ネタは、『ヒトラー ~最期の12日間~』という映画作品です。ヨーロッパにおける最大のタブー、ヒトラーを描く。それも、ドイツ、イタリア、オーストリアという三ヶ国共同制作で。ヒトラーその人を演じたのは、ドイツの国民的名優、ブルーノ・ガンツ氏で、日本語版の吹き替えを担当したのが大塚周夫氏。特筆するまでもないことだが、両氏の演技は人生を知り尽くした男の情熱、狂気、悲哀をまざまざと伝える。
大塚さんはそもそも、NHKの大河ドラマに何本も出るほどの演技派。洋画の吹き替えでもチャールズ・ブロンソン役等、多くの作品で名演技を披露している。役柄としては、天才的な才能を持ちながらもどこか狂気を抱いていたり、トボケた一面を見せるキャラクターが多く、ヒトラーを演じるにあたり右に出る者はいなかったのではないかと思う。80をゆうに超える年齢で、若いころは進駐軍のバーでタップダンスをしていたというのだから、この時代の空気は主役のガンツ氏以上に身に染みて知っている。
ベルリンの地下要塞に籠る、ヨーロッパの覇道を歩んだ男がたどる末路。氏の名演とともに味わってみてはいかがだろうか。
ちなみに、水木しげる御大もヒトラーを題材にした作品を描いていたりする。氏の持ち味を活かしつつ、時代の寵児となった男の歩みが描かれる。