書評ブログはなぜ失敗するのか
書評ブログが成功しない、こんなにがんばっているのに……。アフィリエイトで稼ごうとは思っていないけれど、それにしたってPVも伸びない。どうしてでしょうか? という疑問が投げられていたので、書評を15年近く書いてきて、サイトのサーバー代くらいしか稼げてない「書評サイトで金儲けなんてダメだよというプロ」の私がお答えします。
そもそも、書評ブログは成功しないようになっています。以上です。
ではあまりにそっけないので、なぜダメなのかについて理由をまとめておきますね。
書評ブログはライバルが多い
案外知られていないのが、書評ブログはライバルが多いんです。いやいや、ブロガーなんかライバルじゃないんです。そんなの、眼中にないんですよ。ライバルは超大手ECサイトです。ECってなんやねん!という人のためにわかりやすくいえば、Amazonや楽天、Yahoo!がライバルってことです。あと、書評専用ポータルもライバルですし、その本の名前で検索したら出てきてしまう出版社も、著者も、マンガならば雑誌にアニメに……全部がライバルです。
そんなマンモス軍団相手にブロガーという木っ端ヤロウが参戦し、そのなかで力のある人、有名な人相手にがんばらないといけない。どうですか。勝てそうですか? 小手先のSEOでもってどうにかできる相手じゃないですよね。おもしろい本があって、興奮しているから、書評サイトはやれる!という気になってしまいがちですけど、冷静になってみれば、ちょっと無理くさい。ライバルが強すぎてPVも伸びないですし、売上も上がらないんです。Amazonのレビューを読んでおけばいいって人が大半ですからね。わざわざ検索しません。検索するなら、Amazonの商品検索欄で、ということになるわけです。
ほとんどの書評サイトは情報量が足りない
2000字は書いていないと俎上にも登りません。で、4000字あると安心ですが、4000字って正直書きすぎです。中身のことを原稿用紙10枚ぶんも書いちゃうと、マンガだったら内容は全部書ききってしまう勢いですし、短編〜中編小説ならネタバレして読む必要がなくなります(1作品が2〜3万文字くらいですからね)。それを避けたら、単なる周辺考察や自分語りになります。
私は利益度外視で、その本やその本の周辺、著者の話や自分語りをして平気ですけど(嫌われますけど)、その本を自分のサイトから買ってもらうというゴールを設定していたら、ネタバレなしで4000字は書けません。もっとも2000字でも「商売」としてでは非効率なので避けるべきで、300字くらいで済ませたいところ。ただ、短文紹介なテンプレートをこしらえてしまうと、ますます評価されなくなります。そういうのは編集者がつけますし、著者ならもっと気の利いた宣伝をするからです。わざわざ読むまでもない。文字数を増やせば事業として採算があわず、減らせば検索にかからない。かなり詰み臭いですよね。そこに加えて、私みたいな自分語りのファン野郎が利益を無視して長文をタラタラ書きますから特にです。
試しに書評ブログで長く続いているところをちょっと探して見てきてください。1冊につき1万文字クラスのサイトがあるはずです。本って1冊あたり10〜15万文字なのに。そしてそのサイトのほとんどが、その本以外のことを延々とくっちゃべってるはずです。そういうサイトは、その本を売っているのではなく、その本について語る「人」を売っているんです。ということは、個人のブランドで食ってるわけでして、いまからそこへ向かうには、百万文字は書く覚悟が要ります。書評というのは「ちょっと書いて副収入〜♪」みたいなものではない、ということです。
その本を検索するのは、もう買った人だよ
これ、意外と盲点です。漫画や小説は、すでに買った人がほかの人のレビューを見たくて探す場合があったり、仲間を見つけたかったり、まだ未購入でも「すでにその作品名を知っている」わけで、これから開拓、教化して売り込むのは難しいということです。あなたの名文を読んだ読者は、帰りに本屋さんで買って帰ります。それだけのことです。
ということは、かなりの部分でロスが出る。「書評→買ってもらう」という、カタカナ語でいうマネタイズ、キャッシュポイント、御足を頂戴するのは難しいんですね。だから、純粋な趣味の範囲を超えてはならない。同じ作品が好きになった人を探しているのに、そこで「買え買え光線」を発していれば、「なんだこいつ」となるのは必定。「俺様、ワタクシの愛している作品を貶めている!」になれば、コテンパンにやられることもあります。旨味が薄いんです。お金儲けとしては、ですよ? 書評を書くことが純粋な趣味の自分にとっては、すでに購入済みの人間が読みにきてくれるだけで旨味があるので構いやしないんですけど、そうじゃない人にはオススメできません。
単価がショボすぎるよ
本屋さんすら10%しか儲からない世界です。1冊万引きされると、取り返すのに10冊売らなきゃならないといわれますからね。それぐらい本って薄利なんですよ。薄利の原因は日本の本が安すぎることにあるんですけどね。びっくりされるかもしれませんが、安すぎるんです。適正価格でいえば、倍はしてもいいんですけど、そんなことをいってもアフィリエイターは版元が出す価格に口出しする立場にないので、受け入れるしかないんですけどね。
で、1冊紹介して1%の紹介料が相場でしょう? いいとこ3%ですよね。1冊売って10%の商売で、かつネット販売という送料負担がある業界ですから、そんな気前よく出せないのは自明です。しかも、本自体が安すぎる。1620円(税込)だったりすると、1冊売って1%で約15円ですよ。100冊売って1500円。あなたのサイトで100人が買ってくれるでしょうか。あなたの文章がすばらしく、サイトの構成も奇跡としかいえないほどに効率的で、それが成約率に反映されて、300人が見にきて3割買って帰ったところで1500円というところです。
これでも、実際の本屋さんレベルですよ。実店舗でこれですからね。すでに述べた通り、怪物企業サイト相手に勝負して、あなたのサイトに特定の本の名前で300人呼べたら御の字です。私がやっているところでも、月に100人。発売日がすぎた翌月は50人、20人となるのが常です。もともと本というものが何百万冊も売れないわけですよ。数千冊なんていうのもたくさんある。そんな本の大半は図書館や専門家、マニアが買うので、検索だってほぼされない。されても超大手の通販サイト。月に1000円稼げない記事を延々製造し続けて、事業として成功しようというのは酷なんです。超大手ECサイトがどうだとか、ライバルブロガーのブランディング戦略がどうのこうの以前に、出版業界の体質、ビジネスモデルからして、食い込んでいけるものじゃないんですよね。
本の旬は一瞬です
花の命は短くて、といいますが、本の旬も一瞬です。いや、シャレではなく。読んで1日、書いて1日。都合2日かけて、1ヵ月保ちません。その本を欲しがる読者がいなくなるからです。また、いい作品ですよ!といって紹介したら、あとはあなたからは買いません。以下続刊ですとか、その著者の作品のファンになったら、もうあなたは用済みです。酷い言い方ですけど、そういうもんです。自分の身に置き換えて考えてみればわかります。「ああ、用済みにするよな」と思いませんか。「ご紹介ありがとうございます。いい作品に巡り会えました!これからもあなたのサイトから飛んで買います」とはならんでしょう。そんな殊勝なファンはいませ……いや、いた。いましたけど、数万人に1人レベルです。砂金集めに近いです。宝くじの高額当選待ちみたいなことはやめましょう。本の旬は短いんです。継続収入にするのは難しいのです。
じゃあなんでお前は15年も書評を書いてんの?
この名義以外にも、WEB、紙問わず、ゴーストライターとしてもあちこちで書評をしてますけど、WEBでの書評というのは食えません。でも、ずっとやってます。それは、本が好きだから。これだけです。採算度外視です。純粋な趣味に採算なんて持ち込むのが野暮です。もっとも、私の趣味には「純粋な」という接頭語がつくもの以外の趣味があるんですけどね。仕事も兼ねちゃう趣味が。でもそれって「好きと収益と仕事が合致する三位一体」の天職みたいなものですから。もはや奇跡というか、神様に感謝としかいいようがないのです。
書評ブログ、書評サイトというのは、通常このうちの収益と仕事が欠けます。だから、完全なる趣味、純粋な趣味じゃないとやっちゃダメなんです。下手に打算的に考えて、「好きとWEBを繋げばお金がやってくるぞ〜」なんて思い込むと、好きだった本まで嫌いになりますよ。それはあまりに悲しい。私の書評は、本好きがもっと本を好きになってもらうことか、本嫌いがもっと本が嫌いになってもらうこと(著者への怒りとか感情マーケティングなのでもうやりたくない)が目的なので、別にアフィリエイトで買ってもらうことも、広告収入を期待することもありません。私の書評を読んで気になったら、今すぐ近くの本屋さんへ走ってもらいたいくらいですから。
自分自身が好きでやっていることなので、そこですり減って、自分が本嫌いになるのはバカバカしいです。月並みですが、書評は「趣味を仕事にしないほうがいい」の典型です。していいものと悪いものがあって、これはしないほうがいいパターンです。
おわりに蛇足を
ちなみにこの記事、4500字くらい書いてるんですけど、1冊の本でネタバレなしにここまで書けます? というか、ここまで読んでないでしょ。普通、そんなに熱心に読みやしませんよ。どこの誰のものかもわからん文章を。無料でダウンロードできるサイト探している輩や、ネタバレサイトを探しているのも混じりますから特にです。書いても書いても賽の河原。厳しい世界ですよ。書評アフィリエイトってのは。
というわけで最後まで読んでくださったみなさん、本当にありがとうございます。読んでいただけるだけで旨味だらけな私としては、まったくもって無上のよろこびです。ただ、書評で食ってやろうと思っていた人にとっては怒りにも似た絶望だと思います。正道には屍しかありません。一捻り、ふた捻りして勝ち残る道を見出してみてください。で、よかったら教えてくださいよ。悪いようにはしませんから……(
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