久川ちん先生の初単行本、『新婚さんごっこ』のレビューです。氏の作品は単行本化されたら必ず買おうと思って居りまして、この本はカバーもそうですがほぼ体型的に幼いキャラが多いのですが、購入を決意させたのはそれらではありません。新人として連載され始めて少しした時の作品、「面倒なんていわないで!」によります。
氏の作品は「文学作品的」と言いましょうか、読んでいるときに読者に展開や台詞回しで引き込む魅力を持っています。ともすれば「エロくてナンボ」と作家側が言い切ってしまう(読者や編集者が多くを望まずに言うのならまだしも、作家がハナから無視して良いものではない)世界の中で、読ませる力があるというのは素晴らしい事です。特に初々しい女性の表現が良く、ひしひしとキャラの魅力、現実感と言いましょうか、そういったものを投げかけてきます。
購入を決意させたのは先にも書きました収録作品の登場人物、「小早川先輩」の存在。
裏表紙のキャラがそうなのですが、ちょっと雰囲気が違います。
カバーと中身も雰囲気が違い、非常に残念。数多あるロリ物の1つとして埋もれてしまうのではないかと。決してそんな事はないので、一読していただきたいのですが…。
小早川先輩は、年上、処女(経験豊富な男から言わせると地雷だそうです)で頭の方がかなーりユルい女性。お花畑とでも言いましょうか、年齢に対してかなり頭の方が遅れている。実際に居るとしたら鬱陶しさと愛らしさ、相半ばす。といった女性です。言葉で表現しきれるほど簡単でテンプレートなキャラではないんですよね。そういうところも、判を押したようなキャラばかり出てくる成年マンガの世界で異彩を放っていますね。
年上キャラと言えば、SかMか。キツい性格かおっとりしているか。
その程度でしかない中で、現実に居そうなその中間的な人間を無理なく描くというのは、セリフ選びの為せる技と思います。さりげない一言を鍵やスイッチにしてしまっている。
などと細々と分析するのも肩がこると思いますのでこの辺で。
これらを踏まえた上での私の評価は、
評価…8.9/10.0
【備考】
8.9中7点くらいは小早川先輩の力。他の作品も高い完成度ですが、
端的にこの単行本の良さを理解するには小早川先輩を見るのが良いかと。
全体的にロリ向け。年上キャラを狙って買っても小早川先輩しか居りません。
こういった年上キャラに読ませる力、文学の妙で攻めてもらいたいなあ。
雑誌の意向、本人の好き嫌いもあるでしょうから叶わないんでしょうが。