自分の舌、目で物を味わえない食通ぶった馬鹿者共はブランドでしか物を買わんから、良いビジネスチャンスかもしれない。 隠岐牛などは現地に赴いて農作業体験などを踏まえた上で味わったが、実に旨かった。どうやら後に松坂牛と同じ等級を与えられたと聞く。しかし、隠岐牛は全く名前が広まらない。数が少ないというのもあるが。
農業地理で畜産も少々学び、牛舎の清掃や和牛の放牧なども見てきたわけだが、種牛がどうこうもさることながら、仔牛が問題となる。宮崎から仔牛を買い付け肥育するだけの近江牛、松坂牛は来年以降継続的に影響が出てくるだろう。
ここが問題で、牛の配合も、そこから生まれる仔牛もその地域の血統で生まれ、育っていると思われているが、実際は違う。生後8~9ヶ月の仔牛、特にメス牛を買ってきてそれを太らせ、早いところでは18ヶ月で肉にする。それ以上飼っていると肉にした値段より飼料代がかさむ為であるが、人生の半分近くを宮崎で過ごした牛を、平然とその土地のブランドで売ろうとする。
国産牛と和牛という言葉も混同されがちで、消費者はそういった知識を一切有していない。和牛と呼ばれる牛は基本的に4種。これ以外には存在しない。
・黒毛和種
・褐毛和種
・日本短角
・無角和種
これの交雑種なども和牛であるが、割愛する。黒毛和種は黒毛和牛で親しまれる牛で、明治時代に在来の牛に外国の牛を交配させて作られた。褐毛和種はあか牛と呼ばれる種類で、戦前に朝鮮半島の牛と海外の牛を交配させる事で生まれた物と聞く。
つまり和牛とは牛の種類であって、究極的には、海外産和牛も存在しうる。和牛は国産とイコールではない。しかし、畜産団体の中では取り決めがあるようで、海外産和牛が輸入されているという話は聞かない。
また、国産牛という物は、日本国内で育った時間の方が長い牛の事であって、先のように海外から9ヶ月の仔牛を買ってきて、日本で9ヶ月と少々育てれば、それは国産牛となる。
平気な顔をして食っている牛肉であるが、何も知らなかったと青ざめて貰えれば、私としては地理への誇りを強められるのでこの上なく幸せだ。地理学をやっていると、あらゆる学問の根底を味わえる。決まりきった手法や、洋書を読んでその解釈でメシを食う連中は、一生「牛のなんたるか」を知らぬままにエリート風を吹かせるだろう。
農家だ何だと世間は下に見るが、お前らのメシは誰が作ってるか分かってんのか、このトンチキめ!と、頭ばかり大きく育った都会のバカタレ共に叩きつけられれば、これほど気持ち良いものも無い。