「今持っている本の中で3冊だけ残してあとは全て捨てて下さい」
と言われたら、あなたは何を残しますか? ツイッター上でこの質問をしているところです。3冊のバランスを考えるのが難しいかもしれません。皆さんのご意見、お待ちしております。
『青年と学問(柳田國男)』
『うらおもて人生録(色川武大)』
私の残す三冊はこれ。
学問をしている自分というのは、本当は下卑た最低の自分を誤魔化すのに丁度いいんです。高尚なことをしているんだと時には思えないと、本当にドロドロになっちゃう。麻雀賭博から足を洗った際に良い大学、好きな分野で学問ってのをやろう。そうすれば、外見だけは身奇麗に取り繕えるだろうと思いましてね。
ですから、私の中では学問が一番上なんです。考えうる限り、実現可能な中で一番高尚な物が学問。無頼な風を装っていても、芯が折れそうなときに助けてくれる。それが学問、地理学なんですね。
その地理学と下卑た自分を結び付けるのが柳田國男の『青年と学問』です。氏は民俗学の大家。どこかでその名を聞いた事があるはず。氏が青年に向けて書いたこの本は、私のようなロクデナシでも学問の世界で生きることが出来るかもしれない。そう示してくれました。「旅行すら学問になる」という氏の言葉が、ロクデナシから脱す機会をくれる気がした。まァ、ご覧の通り今でもロクデナシなんですがね。
最後に『うらおもて人生録』これが最低級にある自分の存在をそのまま許す無頼の本。寄らば大樹の陰と地理学に寄り添えないとき。自分の下らなさを感じるときに読む本。色川武大とは阿佐田哲也のこと。真の無頼を生きた小説家です。氏の言葉はどれもこれも安い。安っぽいのではなく、安い。気楽だ。学による飾りのない、最低級の文章が自分を飾ろうと必死な醜さに気付かせてくれる。
こんなカッコをつけた文章を書くことを戒めてくれるわけです。
学問で高尚さを求め、一方でそれは愚かしい、向かないことだと自嘲する。
その矛盾を許してくれる最終的な着地点がこの本です。
以上三冊があれば、特に後は要らない。他の本はひとえに贅肉に過ぎない。
文芸を読めば読むほど下らん技巧を覚えるし、学問をすればするほど尊大になる。
贅肉がなければ人の社会では認められないけど、私は定期的にその贅肉を捨て去りたい衝動にかられる。私の読書遍歴、人生観はこの3冊で説明がついてしまいます。
『人文地理学原理』は既に廃刊。岩波文庫の上下巻も重版未定で入手困難。なにより需要がないかと思いますので割愛。良い本なんですが。さて、なにやら池上彰氏がオススメしているとかで、『青年と学問』は改訂重版されたようです。とても活字が読みやすく、40年前の岩波文庫特有のでっぷりとした書体ではないし、級数(フォントの大きさ)も大きくなってストレスが溜まらないですね。
『うらおもて人生録』は上で書いたとおり。内容にはあまり触れていませんが、おちこぼれの代表が書いた、おちこぼれに向けた『色川版:生きるヒント』です。おちこぼれの私が読んで助かるんですから、おちこぼれじゃない皆さんが読めばもっと発見があるかもしれません。