主人公の「目覚計祐(めざましけいすけ)」は高校一年生。
幼いころに母親を亡くした幼なじみのヒロイン「まくら」とは家族同然の仲。
そんな二人が計祐にまつわるとある出来事をきっかけに、
お互いの気持ちに気付いていくという典型的なティーンの恋模様を描いた作品。
基本に忠実であるということ、細かい人物描写に今更ながら、
はっとさせられる瞬間があること、みずみずしくもどこか物憂げな雰囲気が独特な作品です。
この作品は星の巡りが悪かったとしかいいようがない作品です。
劣っている部分があったとは思えない。それでも作品は終わってしまう。
それは、誌面構成という理由によるもの。
世は「萌えマンガ」全盛時代。
しかし、可愛らしいキャラが出てきたとしても萌えとは限らない。
今のジャンプは読者層の高年齢化が顕著だといわれ、
編集部としては、そこからの脱却がひとつの目標なのだと思う。
愛らしいキャラクター、ジャンプ作家陣の中でも見劣りしない画力をもってしても、
「本当は小さなころから惹かれあっていたのに、お互いの気持ちに気付かないようにしてきた」
というテーマの陰翳(いんえい/意味的に陰影とはしなかった)に富んだ描写は小中高生には
難しいものではなかったか。単にありきたりの幼なじみ作品に映ってしまったのではないか。
そもそも本作が萌えマンガとしての恋愛作品でなかったとすれば、
世のオタクには理解しがたいテーマであって、ジャンプの読者層に合わない。
また、これを理解できる読者を十分に抱えている雑誌は現状存在していないように思う。
一方で、編集部側の姿勢にも疑問を感じている。
内部事情や作家との関係性などは推し量ることしかできないが、
どう考えてもジャンプには萌え要素が多過ぎる。萌え作品の過剰供給状態である。
それがいけないとはいわない。ジャンプがすべて萌えマンガになったところで、
私は一向に構わないと思う。しかし、萌え作品を掲載させ過ぎたからといって、
あっさりと作品を、それで生計を立てる作家を切ってしまってよいものか。
というのも、本作品の掲載時には他にも恋愛作品だけで『ニセコイ』『恋染紅葉』と連載され、
短期集中連載に『こがねいろ』というように、恋愛作品を過剰供給させていた。
これだけ投入すれば、どうあってもキャラクターやストーリーが被ってしまう。
そうなれば、読者はわかりやすさを求める。つまりはギャグや性的であることが重視される。
上記の作品がそういう表現に逃げた作品という批判をしたいのではなく、
正々堂々と戦った結果、時代と読者層に選ばれなかったという話。
テコ入れ、テコ入れで迷い道に入り、打ち切り決定後に出す予定だったキャラを
バタバタッとねじ込んだのだろうか。不必要に急展開してしまった箇所が散見される。
テーマが難解ではあったろうが、主人公とヒロインがお互いを強く意識しあう過程を
少ないキャラ、少ない展開で見せていく方がよかったのではと思うがどうか。
読者獲得のために引っ掻き回してしまった分、残念である。
読み方としては、『めだかボックス』なども萌えマンガといえるであろうし、
今のジャンプ内で地位を獲得するのは難しかったといわざるをえない。
それでも、私は一読することをおすすめしたい。その価値は十分にあると考える。
本作の持つ独特の二律背反の空気は、恋愛作品に飽いた方の心にも響くものがあろう。
『パジャマな彼女。』全3巻。
『わたしのせれくしょん』