学校と家しか知らない若い作家(学者や評論家という類)は、文芸を除けば基本的にクズと言える。 大学時代に味わった苦労など、今の仕事で言えば、午前中で仕上げてしまう仕事に同じ。 全然苦労の部類に入らないものも多い。
そんなものしか味わっておらず、更に社会を知らない。社会という物は抽象的で、味わったことのある人間にしか説明できないものだから、彼ら「社会」を知らない人間は皆、等しく「社会」は大したことの無い物だと見くびって語る。
物を生み出す苦労や、徒労となった仕事、上司の理不尽な攻撃、時間に追われ、満員電車に揺られ……などというのが彼らの考える「社会」だが、それを一つ一つ、知りもしないのに社会人を見下すことは、やはり「すっぱいぶどう」のお話と同じではないか。もちろん、「こんな簡単に列挙出来るものではない」ということは、社会人なら分かっている。自分より出来が悪いに決まっているなどと思い込むのは、苦労を知らぬ、社会を知らぬ人間の典型なのだ。
私は特異な人生だったために、特殊な社会観を持っており、それで社会を推し量ってきたが、約半年ほど社会人をやって感じることは、やはりやってみなければ分からないことばかりだということ。
百聞は一見にしかずという教え通りだと思うし、「学生時代は天才的だったと思うけど、そんなのこの業界では普通だから」と上司に言われた通り、まさにその通り。業界で自分より阿呆を探す方が難しい、不可能に近いくらいだった(私の仕事範囲では)。
そういう、自身の無力さを知らない若いのが、ムチャクチャな論理で他人を論破し、悦に入るのは構わないが、やはり、24、25となってきてそれでは恥かしい。終わらない大学生活の中にいる、自称学者や評論家が居て、それらに対する違和感が、今日、急激にネット上での論争から興味を薄れさせているのだと思う。
先ず、他人を批判、否定するのは極めて簡単であるということ。誉めることの方が遥かに難しい。伴侶のハラのたつ部分は幾らでもあげつらってやれるが、良いところはまったく書き出せないのだという。
間違ったことを言っている人間を探し出してこっぴどくやるのが「正義」と思っているのだろうが、それは弱い者イジメでしかないのではないか。しかも、匿名、半匿名で、狭小なコミュニティー内だけで盛り上がる。危険な政治団体、宗教団体と何が違うのか。
結局、本当にまともな人間はそういう所に加担しないから、自分より優れた人間を見たことが無い「愚か者」共が集い、「俺達以外は皆バカ」と、社会を知らないバカモノ特有の思想を醸成させていくのだろう。 また、その過程で、社会を知っていたり、まともな人間、慧眼の持ち主を排除していくと考えられる。
社会悪に対する意識、知識が豊富だとしても、それは単に「暇人」だからであって、彼らが頭脳明晰な稀有な存在であるというわけではない。2、3日待っていただければ、彼らの言う様々な論拠を学び、同じ場所に立つ自信がある。彼らの数年来のライフワークさえ、数週間で会得できる。有能な社会人ならもっと時間は要らないだろう。
間違ってはいけないのは、
幼稚園<小学校<中学校<高校<大学<大学院<社会人
だということ。大学院を出たとしたら、研究者や教授という立場になる。
まともな機関でまともなサラリーマンになれば立派な社会人だが、ポスドクどころか無職者同然、高学歴ワーキングプアな自称作家は、既に社会では敗北し、多くの社会人の下の存在であることを認めなければならない。これが認められないから、「ガキ」だといわれる。そんなガキにまともな何かが生み出せるはずがない。社会人をナメているから、何も聞きやしないし、学ばない。いつまでも社会人の下の存在で居続ける。
結局、バイトあがりの深夜のファミレスで、鬱屈した思いを周囲に向けるばかりになる。「あいつらとは違う(根拠は頭脳や学歴)」「俺はすごいんだ(社会人とケンカしたことないけど)」「ビッグになってやる(大人の発言とは思えんぞ」とまあ、規定路線に雪崩れ込む。で、「大人が悪い、社会が悪い」ということにする。
もうお分かりでしょうが、大人も社会も知らない彼らが、何で大人と社会が悪いといえるのか。何も知らない、無知、無能の極みのタワゴトと処理されるのは当然。社会人になって、この部分が最も明確に認識できた。今まで大概のことを言ってしまった。見過ごしてくれた大人は優しいなと感謝すらしている。怨みに思うことはあれど、やはり現状、感謝の方が上回る。
ネット上の論争が下らなく、革命思想的になってきたのはひとえに、出来る人間が抜けて行ったから。出来る人間が今も居るという妄想を元にコミュニティーが未だに運用され、それに気付く力が無い人間達がそこに集う。
だからつまらないし、単に批判しか出来ない建設性の無さが目につく。
「だったらどうすればいいの?」という対案に応えられないのがその証左だろう。
社会、大人、つまりは「実務・実態」を知らないから何も言えない。
彼らは不当に無視されているわけではく、正当に評価されている結果だと、今になっては思う。