ネットの広告戦略が失敗するのはなぜか
ネットでものを売るのは、実は結構難しい。ネットは実店舗と違って、もう買うものが決まっている状態でお店に(検索して)行くから。検索されると、もうその商品の名前や形まで決まってしまう。そうなると、ウインドウショッピングは起こらず、価格の比較だけになる。そんなの勝ち目がないのは明らかです。
「お前から買わなければならない理由はなんだよ?」と聞かれて、しどろもどろになるような商品は売れません。聞かれないような商品じゃないと、ネットで広告してまで売るのは損益的に難しいというのが私の考えです。
ネット広告で成功するには、まず商品ありき
「なんで買わなきゃいけないの?」と聞かれないような商品を作れているかがすべてなんです。一目見てわかる価値、特殊すぎる機能、ニッチすぎる存在になれるかどうか。中小がネットでものを売るときに考えるべきはそういうところです。すでに大手企業のチェーンが実店舗をそこかしこに構えているようなビッグワード、ビッグアイテムを売ろうとしてもそうは問屋がおろしません。
実店舗がそこらじゅうにあってもネットで売れるものといえば、ハンコです。実店舗がないと安く上がるので。ただ、これだけで十分な利益が出るほど儲けることはできません。ネットにも大手がいますからね。だから、キャラものの印影を彫り込むハンコ屋さんなんかが出てきて、超ニッチに勝っているんです。
偉そうに語っていますが、私も超ニッチに勝とうと思って、釣りのテクニックを紹介する本を書きました。電子書籍にしたところ、全然売れませんでした。そういうのは動画で見ないとわからないからです。自転車の乗り方とかもそうでしょうし、サッカーのドリブルもそうでしょう。字で書いてあることに魅力を感じないんです。どうせ自分でやってみないとわからないことを、わざわざ本で読む人は珍しい。ましてや、本当に上手くなろうと思えば実績のある人にその場で教わるしかない(と世間は思っている)のです。そういう消費者心理がてんでわかっていませんでした。
ニッチのやり方も色々です。そして、ネットのニッチで勝つところは、実店舗を出しても勝っています。実店舗を構えられるだけの力があるから、ネットで勝てただけ……だとしたら、ネットの強みってなんでしょう。ネット広告っていわれるほど効率的なのか、という疑問も出てきます。
まあ、新聞やテレビが見られなくなったいま、ネット広告に切り替えざるをえないんですが、ネットで商売すれば誰でも簡単にガバガバ不労所得よ!広告は投資だ!ドカドカ打て!!という時代ではないということは理解しておいたほうがいいかな、と思います。
ネットの広告ではラブストーリーが必要
ラブストーリーは突然に。やってきません。ストーリーを語れない商品はそもそも土俵に上がれません。あなたがネットで売りたいその商品は、他社製品に比べて優位ですか? どれくらい優位かといえば、3割以上高性能か、3割以上安いかです。3割違うと、お客さんは気づきます。これがマジックナンバー。これ以下はどっこいどっこいと判定されます。
でも、3割も優位になる商品はそう簡単に開発できない。だからこそ、ストーリーが必要です。あなたに買ってもらいたい、あなたのために創りましたといわんばかりのラブストーリーとラブレター。ストーリーは3割増に簡単にできます。もちろん、比較的にですけどね。ただ、これがないとまるで売れない。売れないと決まっているのに、なんかよくわからないコピーや、安さを打ち出して売ろうとする。そこに無理が出る。
80%オフ! マンガ1巻試し読み無料! とかですね。そういうのはデカいところに勝てません。デカいところはデカいからこその信頼度があるので「安いんだったら試してみるか」となりますが、徒手空拳でやっている中小零細の逆転策としてのネット販売では通用しません。ますます不気味と思うだけで、お金を払うタイプの人たちは敬遠しがちになります。利益は減り、クリック報酬型広告なら買わない客ばかり集め、大損するだけです。
なぜ断言できるかですか? 電子書籍元年と呼ばれたころにがんばっていた私の経験からくるものです。当時は電子書籍を読める人間が限られていたのに、安売りするとヤバかったので、普及してきたいまなんてそれはもう……オソロシヤ
SNS戦略で失敗するのは、担当者がSNSをわかっていないから
SNSはとても時間のかかるものだということをご存知ですか。私はコンサルをさせていただいた某遊興店様の店長は、かれこれ12年来のお付き合いです。私の駄文にお金を出してくださる編集長も、10年来のお付き合い。ツイッターで知り合った方とでも、7、8年のお付き合いで、仕事が実になるのは実はかなり時間がかかります。ネットだから即売れるなんていうのは勘違いも甚だしい。というか、そもそも仕事のために付き合うつもりじゃなかったからもらえたお仕事で、買え、金くれ!っていっていたら、お仕事はいただけなかったと思います。抜き身の刀身で利益度外視、あばれはっちゃくな私を遠くで眺めておもしろがる。それを何年もしていたから、「ちょっと使ってやろうかな」となったと類推しているところです。
(今度ちゃんと聞いてみます)
ずいぶん前からですが、ネットならどんなものでも即売れると思って参入してきている人たちばかりになってきたので、ネット上には即物的な情報ばかりがあふれます。これで儲かる!これで痩せる!そんなものばかり。で、企業のSNSやブログを見ると、「新発売」「ぜひ見にきてください」そんな言葉だけがひとり寂しく腹踊りしてます。というより、それ以外のことは何一つ書いていません。月に1、2度更新したと思ったら、買え、買え、買えの大プッシュ。一体誰が真剣に読むんでしょう。付き合いでフォローしているだけで、実際はミュート状態になっているはずです。まあ、私もそうなんでしょうけどね。買え、買え、ではダメなんです。でも、相変わらずITに弱い経営者と、やる気がないか企業アカウントでふざけるなよと怒られるのが嫌な担当者の相乗効果で効果ゼロのプロモーションばかりになっているのが現状です。
あなたの会社のアカウント、おもしろいですか? 仕事をサボってでも四六時中見ていたいと思います? 仕事をサボってでも見たいようなコンテンツでなければ、失敗の公算が高い。あなたが個人事業主なら、あなたのことをクソミソにいっているアカウントに向かって、「いたらず申し訳ございません……」といいに出かけてますか? やってないでしょう。だから、利益に繋がらない。利益を度外視してコンテンツを作り込み、ひとりひとりに実際に会っているかのように接客するから、利益が出るところは出るんです。SNSやブログはいまや超面倒なんです。でも、やらないという選択肢はないですし、仕方なくやるとライバルにコテンパンにやられます。新しい支店を置いたというくらいの覚悟を持って担当者を決めてがんばることです。ずっとこう書いてますけど、全然浸透しませんがね。
楽して稼ぐ方法なんてありません。そんなのが通用するのは1年程度。技術が普及し、世間にバレたら、一瞬で飽和状態になります。いまがその飽和状態です。実店舗もネットも同じ。愚直にやる時期にきているわけです。
お客様は必ずホームページを通る
チラシでもネット広告でもSNSでも、お客様となる人、ユーザーやファンは、たくさんの入口から入ってきて、ホームページなどのネットの通路を通り、あなたのサービスや会社、個人にたどり着く。そのことがわかっていなくて、通路に大穴を開けたままにしている人がとても多いと思うんです。
たとえば、旅館が客の呼び込みをしているとしましょう。表通りで声を出している従業員が元気で美人で、門構えも趣があるからいいなと思って入ってみると「赤じゅうたん」は汚れて茶じゅうたんに。部屋の畳は毛羽立っていて、布団もなんだかカビ臭い。あなたは「失敗した」と思うはず。でも、もう宿は変えられないかもしれません。私は気が弱いので変えられない。
でも、ネットはそうではありません。いつでも変える(帰る)ことができます。「あれ?」と思えば、「サヨウナラ」。このことを理解せず、効果測定もしないでいる会社や、していたとしても、それがプラットフォームや広告の掲載媒体、広告の出来のせいだと決めつけている人は、大抵ネットの集客に失敗しているはずです。まあ、私以下、ほぼ全員失敗しているわけですが。
まとめ
- ネットで売れるのは買う理由が一目でわかるもの(値段、価値、ストーリー)
- ネット広告は出せばいいというほど甘くない(ほぼ詐欺状態)
- SNSやブログ戦略も、結局実店舗と同じ。手間暇がものをいう
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