かつて家電を目指したゲーム機があった。という書き出しから始める今回の企画。大敗を喫したハードの共通点を見て、二度とそういった失敗をしないようにしてもらいたい。ユーザーが満足できる負けハードならいいが、悲しむ負けハードは出てきて欲しくない。
その名も3DO。松下、つまりは今のパナソニックブランド製品である。
「インタラクティブマルチメディアプレイヤー」という売り文句からして、
焦り以外の何の要素も見て取ることが出来ない。極めて危険だ。
何が出来て、何が出来ないのかが全くもってハッキリしない。
以前にコラムで語ったが、目的のはっきりしない物は売れない。
また、ゲーム機には余計な機能をつけると、ゲーム以外の用途で買う連中が増え、顧客の像がぼやける。ハード所有者ではあるが、ゲーマーではない存在にハードを買われてしまうと、ゲームメーカーとしては見かけ上のユーザーが多くともゲームが売れないという苦しい状況になる。
何が言いたいのかというと、家電屋が考える商売は駄目だということ。
1994年に既に前例があった。54800円という売価。ゲーム機として売っているわけではない。家電だからこの価格は至極当然という姿勢を見せ、独自にタイトルを集める努力を怠り、世界の松下だから大丈夫。黙ってソフトをウチに出せ…。
今のPS3、つまりはソニーを見ていると3DOを思い出すわけです。
そしてもう一台。PC-FXというNECから出たハード。エロゲーハードとも呼ばれ、1994年に発売されるも私は買えなかった。こちらも大体5万円程度の定価で売られていた。直後に出たPSが39800円で発売、SSが45000円弱から39800円に値下げを断行。ハードの価格は性能に大差が無ければ致命的な結果を生む。そして、PS-FXはあまりにも特殊な設計の為、PS/SSへの移植や向こうからの移植が困難なハードだった。そうです。今のPS3と同じ。360やPCは開発が容易だが、PS3は難しく、PS3で作ったソフトは他のハードに移植しにくい設計になる。となると、移植しやすいハードを中心に開発が進んで行く結果となり、そういったハードは初速で売り逃げなければシェアを失う。
アニメの映像をなめらかに動かす為の専用チップを積んだPC-FX。
PSやSSにはそれが載っていない。じゃあ、ムービーは再生できないか?
明らかな劣化が起こるのか?そんなのを気にするのは当時のアニオタくらいなものだ。今のアニオタなら気付かない水準の話だろう。それよりも何よりも問題なのは、3Dのポリゴン処理が出来ないチップであったこと。当時の最先端であるリッジレーサー、バーチャファイターといったゲームが遊べないのは致命的だった。PC-FXは「10年遅いんだよ!」といったところか。
これもPS3に当てはまる部分がある。時代にそぐわないチップを積んでしまった。
最高画質のムービーを流すのが時代の先端ではなく、よりリアルな思考、処理が時代の先端になることに気付けなかった。Wiiや360はムービーが流せないのか?3Dキャラを上手く動かせないのか?というとそうではない。プリレンダムービーに対して360はリアルレンダで対応している。チップとメディアという贅肉が、ハードを苦しめたという点で非常に似ている。
どうしてここまで家電屋のハードは同じ失敗をして死んでいくのか。
先の失敗に倣わないのか。
PSがSSに勝ったのは、ひとえに「ゲームが面白かった」からではない。
「ゲームの面白さが分からない輩に訴求した」からだ。
「パラッパラッパー」や「アークザラッド」、「ポポロクロイス物語」という、ゲームが分かってない人間でも楽しめるタイトルを、『自前で』出したのが大きい。
Wiiが勝ったのもこれだ。犬畜生でも分かるようなゲームを、「自前で」出す。
これが出来ないメーカーは須らく死んでいく。こう書くと、一般市民をバカにしていると言われるが、(心のどこかで見下している気もするが)そうではない。犬畜生でも分かるゲームは、頭が良い人間だろうが、オタクだろうが関係なく分かる。分からんゲームを出す方がどうかしている。そういったタイトルはサードパーティがチョイチョイ出すだけでいい。ファーストがやることではない。
ゲーム屋から家電屋に戻ろうとしたのが運の尽き。
そういえばゲームキューブのDVD再生可能版、Qとかありましたね。あれも松下か。