東京は丸の内の天麩羅屋。頼んでから揚げる為時間がかかる。
その上マズい。それもマズいの限度を超えている。
美味しくないのではなく、「マズい」と明確に思える味。酷い。
これで客に偉そうに出せるんだから、その豪胆たるや凄まじい。
安い油を使うので、油のキレが悪く、ベショベショの天麩羅。
職人の腕が最低なのか、カリカリに揚がった衣は油臭く、苦い。
天麩羅は五感の全てを駆使した職人による芸術なのだ!
とは海原先生の弁だが、全くもってその通り。
旨いと言われる高級天麩羅屋の一流の職人がこんなもんか。
銀座の寿司屋、某ガイドで三ツ星の店は接客が最低であることで有名だが、その大将達は「喫煙者」だ。嫌煙厨の戯言などと言うが、タバコを吸わない人間は少なくとも吸う人間の3倍は臭いに敏感だ。特にタバコの臭いに対しては決定的な差が出る。タバコのヤニ臭い手で握る寿司が旨いはずが無い。それを権威だからとありがたがる連中、高級店に出入りできる事を誇らしげに自慢する連中による美食家集団が、こういった店をのさばらせるのだろう。
店内に入ってまず気付くのが、古い油の嫌ったらしい臭い。
鼻が元来悪いのか、そんな職場に慣れてしまって油の香りを感じないのか。
いつも通りの「喫煙料理人」なのか。
客は正直だ。値段だけが名店で、馴染みの客が不味いメシに金を置いて行くのだろう。そういった各界のお偉方を相手にしているうちに、新規の客に対して、ウチの味が分からないバカタレとレッテルを貼るようになった。結果、不味い天麩羅を高額で出す客の少ない店が完成した。
目で見て、耳で聞いて揚がり頃を察して欲しい。使っている油も古くて安い(少なくとも実家で使っているゴマ油やグレープシードオイルに比べて)ので、苦味が出る。マニュアル通りに揚げてくれる「てんや」特製の留学生が作る天丼に及ばない味だった。まさに絶句。
食後に茶や菓子を出す。それだけで留学生の天丼の何倍、何十倍の代金を取るのか。
ふざけるのも大概にしろと。
お前は、自分で、この天麩羅を食ったことがあるのか。
旨いと思うのか。思うなら相当に脳か舌か鼻が痛んだ証拠。
料理は舌だけで味わう物ではない。鼻で味わう物でもある。
喫煙者が料理人として失格するのは、その双方が欠けるため。致命的だ。
鼻のきかない料理人には、油のしつこい臭いを感じ取れない。
油の替え時が徐々に遅れて行く。結果として絶望的な天麩羅を出す。
他の板場に入ったり、職人として若い間は他店の味も見てきたのだろうが、
地位を築くとそういうこともしなくなり、味が常に劣化して行く。
それが分からん本人と、金満な客によって劣悪な「衣付き揚げ物」が形作られる。
あんなもん、天麩羅であるはずがない。海原雄山並の横暴が許されるなら、
朱墨で看板に×を書いて帰るところだ。
親にも申し訳無い事をした。息子に良い所を見せようとしてくれたのだろうが、
食事の席では会話は弾まなかった。
「東京は客が多いからこんな店がやっていけるんだなぁ」
などと、怒りと照れと情けなさを押し殺して語らせるなんて。
親が子供に対してこんな形で恥をかいたなどと思わせる店が「名店」だとは。
なんとも滑稽と言いますか、妙な店、妙な街ですよ。