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就職と贅沢病について

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大企業

大企業に就職したい。そういう学生が増えている。
昭和中期以前に産まれた方からすれば、最近の学生はなんと意欲的なんだろうと
思われるかもしれません。しかし、実際はそうではないのです。
現代の大企業志向と、かつての大企業志向について触れてみたいと思います。


かつての大企業志向といえば、時代の最前線で戦う「出来る人」という、
輝かしいイメージを持たれる方も多いのではないかと思います。
事実その通りで、エリート集団としての大企業がそこにはありました。
一方で現代の大企業志向はかつてのそれとはまるで異なり、
「誰かにおんぶにだっこで楽をしたい」という安定志向、怠惰志向が多分に含まれます。

そもそも仕事をしたくない、生きていければよろしいという考え方なので欲がない。
それに対して昭和的感覚で非難したい気持ちはありますが、
個性化などとやらかしてしまった以上、行く必要もない人間を大学に送り出すなど
してしまった以上、批判すべきは学生という結果ではなく、原因の方。
すなわち、大人の負うべき負債であり、問題であると私は考えます。

また、輪をかけて残念なことに、今の子は就職できなかったから何をするというでもないのです。
恥ずかしながら、私は上手く就職ができない人間です。
本格的な就職活動も4年生の2月中旬からはじめました。
卒業まで1月と数日だったと記憶しております。
一般的な就職戦略からすればありえない。遅過ぎる。働く気がないのかと揶揄されるところです。
しかも私は腰椎を痛め、2ヶ月療養、その後歩行訓練等のリハビリがあり、卒業論文が書けず、
1年間病気による留年を経験しております。実質4年生を2度やっておるにも関わらず、
性根を据えての就職活動は5年目の最後の1月しかしていない。
それでも就職できています。こんな遊ぶことにしか本気になれないボンクラでも、です。

私の職歴についてですが、編集プロダクションに卒業前の数週間アルバイトとして入った後、
2ヶ月の契約社員として身を置き、その後、転職活動を経て出版社の書籍編集となりました。
この間わずか3ヶ月。仕事を3ヶ月で変えてしまう、尻の座らぬ大馬鹿野郎です。
それでも、すぐに第一線(書籍編集)で仕事をさせて欲しいという熱意があったからこそ、
出版社に採用していただけたのだと思います。

—-注釈—-
時代的に気合や熱意、汗ではないと思います。私自身、古い人間ですから、ひしひしと感じます。
しかし、採用担当もまた、古い人間だということを学生の方には知っておいて欲いのです。
————–

本気ならなんだってできるはずです。就職サイトに載っている企業にエントリーすることが、
就職活動だと思っている方が多い。かつての就職活動は、そんなものではありませんでした。
HPなんてありませんから、当然ドブ板です。私はここに目をつけました。
今でもドブ板で就職活動をすれば、感じ入って面接をしてもらえるのではないか。
こう考えたわけです。私は本が大好きですから、その熱情をぶつければ、
学歴や職歴を凌駕できると踏んだわけです。若さゆえの行動ではありますが。

そうして、神保町、岩本町、外神田、小川町と、神田界隈のビルの看板を眺めるところから
はじめました。土地勘がない方にはわかりにくいかと思いますが、このあたりは書店街であり、
出版社街でもある、日本の出版の心臓部。大小数多の出版社がひしめいているわけです。
そこの看板を見、出版社や編集プロダクションを探しました。
巣に帰るやいなや、それらを徹底的に調べあげ、かつての出版物にいたるまで分類し、
今、自分を必要としてくれそうな出版社、プロダクションをピックアップしていったのです。
もちろん、すぐさま最前線で、雑誌ではなく書籍、つまりはハードブック。
その中でも文芸ではなく、文化やビジネスのお堅い本をすぐにつくらせてくれるところ…。
こうして狙いを定め、あとは責任者にドブ板交渉を行うわけです。

就職支援サイトに広告を出すのは高い。しかし、人材は欲しいというところは
調べればごまんとあります。 希望職種などといいますが、本気でその仕事をしたいと思えば、
これくらい平気なはずです。しかし、今の子はそうしないのですから、それは本気ではない
ということではないかと古い人間の私なぞは思ってしまいます。

かつての就職活動は職種を選ぶものでしたが、現代の就職活動は企業名を選ぶものになって
いるのが問題です。以前は農家の子は農家。大工の子は大工でした。
それが職業選択に幅が出るようになって、多くの人間は歓喜した。
こんなに幸せなことはありません。農家じゃなく会社員になれる、よかった。と。
しかし今やそのありがたみは雲散霧消。いずこかへと消え、有名企業に入れないなら
仕事はしないという横柄な態度がまかり通るようになってしまいました。
これはもう致命的というほかありません。企業を選ぶなど、一般人には過ぎた贅沢です。
社会は厳しい、現実は辛いなどと、若い子に夢のないことはいいたくはありません。
しかしそれでも、企業名は自在には選べないよと伝えなければ、この問題は解決しないでしょう。

現代の就職における贅沢病。これがなにより大きな問題です。
今の子にとって、大卒という肩書きは負債です。
「大学を出たのに」といわれるから、うかつな仕事は選べない。
だから、大企業を望み、贅沢をしなければならない。
だとすればそれは、親の教育による贅沢病。生活習慣病なのです。
いい大学に行き、いい会社に就職せよと言い続けた生活習慣が、今の子をダメにしているのです。

就職しない人間を、就職している人間がサポートするのは限界があります。
しかも、その原因が、自分の世代ではなく、親の世代による失策で生まれた負債だとすれば、
負うべきは今の子やこれから就職する子たちではないはずです。
大人が生み出した問題は、大人が解決しませんか、

軽々に子世代、親世代のみを悪人とはできませんが、今一度すべての人に考えていただきたく、
まとまらない駄文を連ねさせていただきました。
 

『わたしのせれくしょん』


今回は仕事特集です。仕事ってなんでしょうね。今の子に聞かれたら、あなたはどう答えますか?

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