私が今回触れるのは、表現規制の問題です。ナイーブな問題かもしれませんが、
芸術や権利のもとで、倫理観が欠如した作品を頒布する行為は、許されるべきなのか
と考えましたところ、やはり、そうではないだろうと。
事の発端は、ライトノベルの受賞作に問題作を見つけてしまったためです。
それは「せんせいは何故女子中学生にちんちんをぶちこみ続けるのか?」と いうもの。
不快に感じられた方も多かろうと思います。しかし、作品であるということを尊重し、
こちらでは原文ママでの掲載とさせていただきました。
第6回ホビージャパン文庫大賞奨励賞の本作は、タイトルを差し替えたものの、
こちらのティザーサイトでは元タイトルとして大きく掲載され、
元タイトルのインパクトを利用した売り込み方を模索していることがうかがえます。
表現の自由といえばそうなのかもしれません。しかしそれは、可能な限り社会と
折り合いをつけた上での話です。芸術作品だからと他人を切り刻んだり、
行き過ぎたエロスの追求は、やはり規制の対象となります。
成年向けという区切りの中での頒布であれば、倫理の面で極めて難ありと思う
ことはあれ、私もこのように取り上げることはしません。しかし、こちらの作品は
全年齢。ライトノベルという、中高生向けのアニメやマンガの世界観に近い小説の
ジャンルとして扱われるのです。
一般に頒布といっても、秋葉原くらいにしかないのだろうと思われるかもしれませんが、
まったくそんなことはなく、全国の書店。特に学生がよく利用する書店などには、
こういった小説が扱われ、全国的に頒布、流通されます。
なにを隠そう、この私も十数年前、参考書を選ぶふりをして、貯め込んだ小遣い銭で
ライトノベルを買っておりましたので、この辺りはよく知っております。
片田舎の小さな書店にも流通している作品群なのです。
もちろん、この作品を読んだからといって、性犯罪に走ったりすることは稀でしょう。
しかし、それでも好ましいものではありません。
こういった作品が出てきた背景には、表現の自由を笠に着て、
下半身と直結するような表現のボーダーラインを取り去ってきた結果です。
すぐに悪影響は出ないでしょう。ですが、このような作品が第二、第三の作品を呼び、
一般化する。結果として、大きな問題が起こる土壌が形成されてしまう可能性は
ゼロではありませんし、倫理観というものは束縛を緩めれば必ず破綻するものですから、
可能性などというのではなく、起こりうる必然だと言い切ってもいいくらいです。
世の親世代、またはライトノベルないしはオタクなどと距離を置いている方々にとって、
これほど不気味なものはないのではないかと思います。
心中、お察しいたします。願わくば、表現規制という方向には動いていただきたく
ないのですが、倫理の欠如については然るべき対応をとられても致し方なしと
感じております。
私は読者に倫理観を求めるのではなく、出版社(版元)や編集者に倫理観を求めたいと
考えております。近年の売らん哉な作品群、出版物には辟易しており、その権化のよう
なこの作品は、見ているだけでえもいわれぬ不安感を感じさせます。性犯罪の類いでは
なく、出版業界や出版文化の瓦解が起こるような気がしてならないのです。
また、日本の文化的な衰退も暗示しているのではないか?と勘ぐってしまうわけで。
やはり、作り手側には高いポリシーと倫理観を備えていただきたいですし、表現の自由を
都合よく逃げ口上に使って欲しくないですね。
【蛇足】
悪いものは悪い。いいものはいい。そのへんを明確に、リベラルにしておかなければ、
オタクは悪だとヒステリックに怒る連中と同じです。
オタクに異を唱えるものは、文化的後進者などと嘲るなんてもってのほか。
個人の趣味の問題などでは片付けられない問題ですよ。これは。