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暗殺教室における「できる側」の描き方について思うこと

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週刊少年ジャンプに掲載されている「暗殺教室」おもしろいですよね。
連載開始の時点から欠かさず読ませていただいております。
私は「ぬ~べ~ 」や「保健室の死神」のように、生徒を全面的に肯定する作品が
大好きです。というのも、ともすれば教師は悪党のようにいわれ、描かれる時代。
そちらの方が売れるからです。人の上に立つものは悪。それが、世間の常識のようです。
 


本作では主人公の所属するE組は、A~D組と異なり、同じ学校の生徒として
扱われません。学校の主要施設から遥かに離れたボロボロの旧校舎を与えられ、
連絡事項も満足に伝えられず、他の生徒に「ああはなるまい」と思わせるために
存在している被差別クラス。それがE組です。
そこへ地球を破壊する力を持つ先生が赴任してくるわけですが、そのあたりは
改めて紹介する必要もないでしょうし、未読の方はこれを機会に
お読みいただければと思います。

さて、この暗殺教室では、できる人間が悪人であるように描かれます。
できない人間を蔑み、嘲る「性根の腐った人間」として描かれるわけです。
ここに世間一般のヒエラルキー(社会のピラミッド型の階層構造)で下位に
属している人が共感を覚え、この性根の腐った人間たちをダメ人間の烙印を
押されたE組の面々が打ち倒すから爽快に感じるという仕掛けがあります。

しかし、私はこの作品に少々気になることがあるのです。
もちろん、フィクションではあるのですが、子どものころに読んだ作品、
大人になっても心に残っている作品は、今後の人生に大きな影響を与えます。
それも、自身も気づかない潜在意識下で。

できる側の人間は、性根の腐った極悪人とされ、それを見て溜飲を下げる。
この構図ですが、実社会ではまるで逆なのです。

学校の成績がいい、スポーツが少々できる。この程度のミクロの世界では
例外も多数でしょうし、競争原理で子どもを育てるほかに今の日本では
教育の手法が確立されておりませんので、ある意味正しいのかもしれません。
しかし、社会に出て様々なものを見聞きし、企業の経営者や大学の教授と
出会い、その話を聞いていると、現実はまるで反対。
できる人として社会に出て活躍している人は、ほぼ善人なのです。

私の昔話ですが、学校の成績もそれなりで、部活動では主将をつとめていたりすると、
上履きは焼かれ、教科書は捨てられたものでした。それでナメられまいと不良を
気取った時期もありました。
実社会では、少数派のできる人間を、多数派のできない人間が集団でいじめることが
ときどき起こります。なぜ、「できる側」がいじめられるのでしょうか。
まるで自分が「できる側」に行くことはないかのような仕打ち。
自分が「できる側」にいないのは、できる側の人間のせいのような口ぶり。

お金がない人が、お金持ちを恨む構図に似ています。
お金持ちはなにも、あなたの財布からお金を盗んだわけではありません。
勉強ができない人は、勉強ができる人に知識を盗まれたわけではありません。
にも関わらず、恨み、妬むのです。私も貧乏ですが、まるで理解できません。

高校時代は学歴至上主義に辟易して、暗殺教室でいうところのE組に自ら落ちた
ことがあります。それまでは特別進学クラスにいたのですが、勉強ができない人間を
腹の底から嫌う連中と席を並べることが耐えられませんでした。
そこで私はいわゆるE組で一流大学に進学し、特別進学クラスのハナをあかしてやろうと
考えたわけです。進学クラスから落ちたと同時に「バカがうつる」といわれたことも
ありました。ただ、そんなことをいうのはせいぜいちょっと成績がいい人で、
偏差値が70を超える人たちは、態度を変えるようなこともなく、
今でも連絡を取りあえています。

もっとも、いわゆるEクラスに落ちてからのあだ名は「都落ち」でしたので、
実際に辛かったのはEクラスになってからだったのかもしれません。
(目的のために降格したので、あまり気にはしませんでしたが)

私の人生経験程度で推し量れる問題ではないのかもしれませんが、
やはり、本当に悪いのはできる側ではなく、できない側ないしは、
ボーダーライン上の人たちであって、勉強やスポーツができる、
たくさんお金を持っているから人格が破綻しているというような、
マンガやドラマ上の常識こそ破綻しているではないでしょうか。

できる奴は悪人という考え方は危険です。できない自分を肯定する考え方だからです。
「できない人間は正義」文字にしてみるとおかしさに気づくはずです。

できる奴は悪人だから、できなくてよい。できない方が正しい。 → そんなバカな!

これが今回の結論といったところでしょうか。

【蛇足】
学生時代という人生の一瞬において、できる側の存在はたくさんいます。
でもそれは、大学、社会人と進めば進むほどふるいにかけられて、
よりできる人間だけが残っていくのです。最後に残っているのは、やはり、
人として正しい人。人間的にしっかりしている人が多い。
加えて性根の腐った奴は、高校あたりで打ち止めになります。ご心配なく。
できる人を恨んでいる間は、できる人にはなれません。
自分が嫌いな存在になれるわけがないんですから。 
できない自分のための言い訳にだけは使わないで欲しいと思います。



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