Contents
権利者は作品に色をつけたくない
私は元々編集者ですし、いまでも編集業をやっています。あと、ライター(とちょこっとゴースト作家)もしております。ですので、作品を作る側のきもちは理解できているつもりです。
一方で、本業として雑誌の本文の簡単なデザインや、広報誌、広告、HPなんかも手がけます。美的感覚がダメらしいのでカッチョイイものは作れませんが、商品を売るための施策なんかを考えて、集客のためのコンサルティング会社の運営が私の仕事です。ですから、経営者、権利者という視点でもものが見える気がしています。気のせいかもしれませんけども。
いま、けものフレンズの騒動を見ていると、内情はわからないものの、作品を大きく、楽しくするために色々と勝手に発表してしまう著者・アニメ製作陣と、そういった勝手なブランディングはされたくない経営陣との間の軋轢があったように思えます。
ブランディングを一本化できないことで起こったトラブル
私は主な仕事が不動産コンサルなので不動産の例で話をしますが、例えば大工さんが知り合いの家を建てる際に勝手にオマケしてしまうとか、広告の総合的なブランディングを頼まれていたのに依頼主が方向性がまるで違う商品を連絡なく市場に投入してしまうということがあります。大工さんがオマケしてしまうと、「ウチにもオマケしてくれ」「ウチにはしてくれなかった」という口コミが出てきてエライ目にあうので、血も涙もないようですが、現場判断はそう簡単にされては困るのです。
またブランディングの例では、HPやカタログは超高級路線でといわれて3年がかりでそうしてきたのに、社長の思いつきで「安い家」を売ろうとしはじめた等ですね。これをやられると「あの会社は高級なのかと思ったら安い家売ってるのか」ですとか、すでに建てられたお客様が「ウチは5000万の家なのに、あんたの広告に載ってる1500万の安い家と勘違いされて困る!ふざけるな!!」なんてことがあるわけです。当然、売り上げは下がります。下がれば、ブランディングを任されている私が怒られます。ノータッチなのに……。で、事情を説明すると「なんでそんな大切なことを先にいわなかった」とやられる。ですので、ブランドを管理する会社や担当者としては、すべての手綱を引いておきたいというきもちはよくわかるのです。
どうでもいい話ついでにもうひとつ。私はどん兵衛より東洋水産、つまりマルちゃんの「赤いきつね」のファンです。関西風のダシもより関西のうどんっぽく甘くて、なおかつアゲが2枚入っています。どん兵衛は辛くて1枚だけ。どうにもあわないのです。これは味覚の問題なので、どちらが上とか鋭敏な味覚とか、究極対至高とかそういう話ではありませんよ。念のため。
また、ダービースタリオンなどの競馬関連は好きです。あと、パチンコ・パチスロ機も好きです。ただ、賭場自体は嫌いです。そういう負の空気が蔓延する場所というと大げさですが、どうしてもあわない。これも個人の感覚ですから、上下の話ではありません。なんで急にこんな話をしたかというとですね……
権利者(コンテンツを持つ者)は無用な色付けを好まない
いま、けものフレンズを見ていると、「どん兵衛」に肩入れしていました。これをカドカワがやれといっていたならいいのですが、そうじゃないならどうでしょう。星野源が出てくる、女優が出てくるCMを見て、「あ、こりゃ無理だ」と思う人がいるかもしれません。少なくとも私は初見で「オーダーキツいっすよ」と思いました。作品の評価を落とすまではいきませんけど、「あ、完全に自分と同じ世界の人、作品ではないんだな」と線引きがなされたんですね。「けいばじょう」も同じです。カドカワがやれというならそれでいいんですけども、競馬にネガティブイメージがある人が見れば、やっぱり作品の評価に関わってしまうかもしれない。
そうなれば、アプローチできたはずの客が減るんです。それはやっぱり望むところではない。もしかすると、角川書店は儲かるからコラボをやれといい、製作陣のすぐ上にいるドワンゴやらのカドカワの部署は難色を示していたのかもしれません。推察でしかありませんが。
色付け(個性を出す)するのがブランディングといわれますが、あまりに大きく当たった場合、色は薄めた方がいい、ないほうがいいんです。AKB48を見てください。アキバ限定だと思っている人なんてもう、どれだけいますでしょうか?姉妹ユニットなんてものが出てきて、ドンドン地域性は消えていきましたよね。あの場合、あれが正解なんです。サッカーのヴェルディがどうして弱くなったんでしょうか?いろいろ理由はありますが、読売グループがサッカー界の巨人(全国区のサッカーチーム)にするという野望を、サッカーは地域のチームスポーツだとして認めず、地域ブランディングをさせようとして読売がやる気をなくしたからです。色付けの失敗例です。
けものフレンズに放送する作品以外の部分で勝手に色をつけることを嫌ったカドカワが、ブランドを改変するなら(儲からなくなるであろうから)金を出せといって、こじれたと私は推測しております。一度ケチのついたコンテンツ、果たして……ですね。
ここまで書いておいてちゃぶ台を返す
問題は、相手がKADOKAWAだってことなんです。会社と現場の軋轢なんてのは私の小さな会社ですらあります。ただ、KADOKAWAは平気でとんでもないことをやらかすってトコなんですよ。会社の規模を背景にして、できっこない無理をいい、飲めないとみるや権利を手放すように仕向ける。それくらいやっても不思議じゃない。内実を知れば知るほど、業界に近いほどに「ありうる」と思う話なんです。私もいろんな出版社から著者を盗まれたり、盗まれかけたりしましたから。こういうドラマのような酷い話は、割と起こることです。もちろん、今回の騒動に関する「事実」が明るみに出てこない以上、妄想の域だということは付しておきますけれども。
【追伸】
アニメのケロロ軍曹で散々痛い目を見て、第2のケロロを狙ったカドカワが事を急ぎすぎたのだとしたら、ゲーメストに投稿していたころからの吉崎観音ファンとしては悲しい限りです。まだまだ、お金的にも、人々を笑顔にするという意味でも、長く長くイケるコンテンツだったのに。けものフレンズで30年、幸せにいられるかもと思っていただけに残念でたまらんです。
この記事へのコメントはありません。