糸井重里氏と埋蔵金
糸井氏といえば、いまでこそ「おはぎ」ないし「ジャム」をつくるジャムおじさんか、ほぼ日手帳で金脈を引き当てたコピーライターというイメージだが、それ以前を知っている人からすると「徳川埋蔵金の人」という印象が強いのではないかと思う。
一方で、我々オタクからすると、任天堂のMOTHERの人であり、自身の名を冠した当時としては画期的なこだわりのゲーム、「糸井重里のバス釣りNo.1」の人というところではないだろうか(ジュリー沢田の歌詞を書いた人!という方も多かろうが、この話題、こんなオタクサイトにくるような今の子には絶対わからないと思うんでパス)。
時代が許した埋蔵金
私が糸井重里氏を知ったのはTBSの徳川埋蔵金の番組で、あれは90年ごろだったかと思う。北関東に埋蔵金が眠っていて、その価値は200兆円と途方もない。出てきたら出てきたで日本の物価が変わるんじゃないかと思われるが、時は折しもバブル真っ只中。そんな心配など要らないというか、200兆ってもこのまま経済成長すればはした金になるんじゃない?みたいな空気があるなか、3億円以上を注ぎ込んで埋蔵金探しがはじまったと記憶している。
しかし、出ない。掘っても掘っても出ない。いまでこそやらせだ!などとツッコムこともできるが、当時はテレビがすべて。人工物っぽいものが出てくるたびに大騒ぎをするが、それすら怪しいものだ。ただ、TBSはちゃんとケツを拭こうとはした。糸井重里のプロジェクトチームが埋蔵金が埋められる場所と断定した理由として挙げていた「黄金の家康像」は、実は銅製であり、しかもまったく無関係の場所から出てきたものであることが判明したのだ。そしてこの埋蔵金関係の噂話に引っ掛けて、北関東の名家に売りつけられたものだった。これで掘る意味を失ったプロジェクトチームは、一応の敗北を認めることとなる。
なんの因果か、この家康像とその逸話がバッタモンだととどめを刺したのは、糸井重里の母校(卒業せず)である法政大学の教授だというからおもしろい。
糸井重里氏とMOTHER2
糸井氏が関わっていたMOTHER2の発売はTBSで埋蔵金の番組がはじまってから4年後。なので開発段階ではすでに埋蔵金は(ほぼ完全)決着していた。氏は作中にあれやこれやと「わかる人にはわかる」ネタを仕込んだ。当時の子どもたちにはわからないことも多かったと思うが、いま考えてみれば主人公の住んでいる街で地下を掘り続けたトレジャーハンター、ヌスット広場のトンチキさん、怪しい青い教団が支配するハッピーハッピー村(勧誘を無視するとつきまとわれて本当に怖かった)、フォーサイドの不動産王、誰もが「黄金の像」に取り憑かれてしまったがために、人生を大きく狂わせたのである。そして、糸井氏自身もー。
たびたび出てくる黄金の像は、ストーリー上は大切なフリをしているだけで、別になくったっていい。最後の敵は「ギーグ」であって、それははじめから明かされている。そこへたどりつくまでの間に、悪魔の像がなんやかんやとからんできてしまうのだ。取ってつけたような設定は、糸井氏が惑わせた我々に対する謝罪だったのではないかと思う。
だってほら、オネットのトレジャーハンターの名前なんて、「ライヤー・ホーランド」。
嘘つきのホラ吹きさんだ。
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