かつて起こりえなかった事件・・・などと秋葉原連続殺傷事件を取り上げたり、茨城の連続殺傷事件を取り上げるのに、舌の根も乾かぬうちに関連事件として宮崎死刑囚や、宅間容疑者の事件を引っ張ってくる。近年類を見ないだの、と言って煽り立てるのに、東京埼玉連続幼女誘拐殺人事件を持ってくるのはダブルスタンダードではないか。
ついにNEWS WATCH 9(NHK)までもが煽り報道を始めてしまった。ダブルスタンダードによる視聴率主義的な報道である。報道は、宮崎死刑囚の死刑執行が行われた6/17の放送分。秋葉原連続殺傷事件と、宮崎死刑囚の犯罪には20年ものブランクがあるのに、さも同じ時代に起きたかのような扱い。20年ですよ20年。バブルじゃないですか。10年一昔ですから、2つも昔の話題と、10日ほど前の話題を同一視するのはほとほと呆れます。
何故このような犯罪が起きるようになったか。それはどう考えても、人が集まりやすい場所が簡単に特定できる時代になったからですよ。また、人が集る場所へ容易に出掛けて行けるようになったのも大きいでしょう。私はこれを、集積型犯罪(都市型犯罪)などと勝手に名前を付けてまとめています。今の都市は人を殺しやすいんです。それも一人で大量に。ショッピングモールや大型の駅(ビル)、歩行者天国などは恰好の的。これが最近の大量殺人のトレンドなんです。実に効率的な殺人技法。大量に人を殺す方法まで歴史と共に進化してしまう。悲しい事この上ありません。
それまでは歴史が物語っているように、一度に大量に人を殺そうと思えば、爆発物を使ったり、大量輸送機ごと玉砕したりするのが一般的でした。爆発物に関しては、横須賀線電車爆破事件(1968)、羽田空港事件やみどりの窓口事件(共に1987)など。共に大量殺人には至っていないものの、死者や負傷者は出ている。悲しいが、この時期は爆発物を用いることが犯罪のトレンドだった。また、大量輸送機ごとというのは、日航機逆噴射事件(1982)を差す。着陸前に逆噴射を行い、故意に墜落させたもの。死者24名、負傷者149名。
同時大量殺人ではないが、大久保清連続殺人事件(1971)は、強姦や恐喝の罪を償って出所した男が、同年にわずか41日間で127名の女性に声をかけ、16~21歳の35名に強姦(和姦含む?)、8名を殺害している。勝田清孝連続殺人事件(1972)は、22名もの人名を奪ったことで知られている事件で、津山30人殺し事件以来の同一犯による大量殺人として犯罪史に残っている。
これらの事件は一切報じません。なぜなら、マスコミが描き、一般人が信奉している犯罪者へのイメージにそぐわないからです。彼らにとって大量殺人や猟奇殺人は、現代日本の病理でなくてはならないのです。また、20年も前の事件と関連付けるのは、犯罪は異常者、つまりはオタクが起こすものであるとすることで、自分が犯罪とは無縁の健常者である事を再確認したいからなのです。
これらの理由により、通常は昔の事件は通常引っ張り出さないのに、宮崎事件だけを引っ張ってきて関連付けて報じるというご都合主義のダブルスタンダードが発生しているわけです。孤独な現代人、心の教育が不十分な今の若者・・・という文句は、20年前、30年前の若者に適応しては論旨が崩壊するから普通は行わない。しかし、オタクであるなら話は別。「オタクだから殺した」という強力な理由付けで目くらましが出来るから。20年前の20代、30年前の20代が今のマスコミを支えているわけですから、自分たちのことは絶対悪く言いませんよね。
私は何度も書いていますが、誰もが犯罪者になる可能性があるんです。誰もが被害者になる可能性があるのと同様に。車を走らせていて、貴方だけ絶対に事故を起こさない(犯罪を起こさない)保証なんて無い。全ては環境次第なんです。環境によって、背景によって犯罪は起こるというのが私の考えです。
だからこそ、犯罪者と健常者という線引きが嫌いです。タバコやゴミのポイ捨てに始まり、車が走ってないからと横断歩道の信号無視、自転車での歩道走行、自動販売機や買い物の時の釣り銭間違いを黙って懐する行為。これら全て、厳密には犯罪なんです。犯罪と人は同じ世界に住んでいる。決して別次元の話題ではない。自転車で人を跳ね飛ばしてしまえば、交通事故になるんですよ。
犯罪者は何ゆえ犯罪を犯すのか。これを調べることはいいでしょう。犯罪の減少に役立つ部分もあるからです。しかし、日本人は特に、この「どうして犯罪を犯すのか」という部分を、犯罪者を実社会から切り出す道具としてしか使えていません。どういうことかと申しますと、犯罪者の中に共通の記号を見つけ出し、その記号を持っている人間は危険で、持って居ない自分は健常だという、勝手な妄想による安堵感を生み出す以外に使っていない。
日本人には犯罪報道なんて不要でしょう。自分の脳味噌で考えられない農耕民族なんですから。
偉い人が言えばカラスさえ白くなる。こんな民族にリテラシーを与えるのは至難の業でしょうね。