学歴、職歴、肩書き、収入……色々人を比べる方法はあるけれど、ゲームの世界では「腕前」がほぼすべて。だからこそいいのだけれど、最近は課金によってこの腕前を買う傾向がある。努力なき成功体験だ。部活動で優勝した、志望校に入った、資格試験を突破したといった劇的な成功体験を日常生活で得ることは難しい(だからこそ価値があり、多くのものが努力するのだが)。しかし、そういったものを金で買うことで、自尊心を満たすわけだ。
ただ、この方法で満たされた自尊心は永遠には続かない。努力で勝ち取ったものではないから、再使用ができない。英会話や資格のように、一身に能力が備わることはない。そして、よほど課金優遇の強いゲームでない限り、努力家、腕のある連中が追いついてくる。だからまた課金する。自分は成功者であり、人よりも偉く、強いはずなのだから、負けることは許されないと思い込むのだ。これは正攻法で成功体験を得た人間にも芽生えるもので、課金者のみを狙い撃ちにするものではないのだが、いわゆる「悪しきプライド」や「保身の精神」の一種と考えられる。唯一違うのは先にも述べた通り、勝ち取った地位や力が自身のものではないということだ。
一度かりそめの成功体験を感じると、それは麻薬のような中毒症状を呼ぶ。あらゆる合理非合理をこじつけて正しいことだと思い込む。自分が偉くあり続けたいと思う虚栄心。自分が強くあり続けたいと願う自尊心。そして、自分より強い奴から自分を守るために課金する。これは抗い難い生物の防衛本能だ。課金はヒトの脳を直接刺激する、摂取なきドラッグなのだ。
課金する人がいなくなったら、そのゲームの運営が終わってしまうのですから、そんなこと言う資格はないでしょう